Q. スマホ老眼も多焦点眼内レンズ手術で治せますか?
数年前から話題になっていますね。
「スマホ老眼」は医学用語や、正式な病名ではありませんが、スマートフォンやタブレットなどの携帯情報端末を長い時間使い続けた結果、老眼と同じように、目のピント調節がスムーズにできなくなった状態を指すようです。症状も、
●手元がぼやけてよく見えない
●画面から遠くに目を転じると、ぼやけてよく見えない
●夕方など薄暗くなると、ものが見えにくい
●目が疲れやすい
●頭痛や肩凝りがする
など、加齢による本物の老眼とよく似ています。問題となる患者さんの多くは調節力はまだ残っている年齢にもかかわらずスマホやタブレットを長時間使用することによって症状が出てしまう20歳代や30歳代です。
しかし、これは水晶体が硬くなってピント調節機能が根本的に劣化したわけではなく、目から同じ距離にあるスマホやタブレットをじっと凝視し続けたせいで毛様体筋が凝り固まり、一時的に動かなくなってしまった状態と考えられます。老眼というより、一時的な近視化や、調節障害です。近い距離を見続けるうちに、目が順応して近い距離にピントを合わせるようになったのでしょう。
長時間の使用を控えてきちんと目を休ませるようにすれば、多焦点眼内レンズ手術を受けるまでもなく元のとおりに治せるはずです。
けれどスマホ老眼は、眼科医としては気掛かりな現象ではあります。一時的な症状で済むうちはいいのですが、慢性化したり、ドライアイが強い場合など、なかには治療でも改善しづらい重度の眼精疲労の状態となったりして、頭痛や肩凝り等も併発し、仕事や生活に支障をきたしてしまうケースもあるからです。
Q. 強度近視も治せますか?
はい、強度近視も多焦点眼内レンズ手術で治すことができます。
近視は「弱度近視」「中等度近視」「強度近視」に分かれ、強度近視は「D(ディオプター)」という単位で表される屈折度数がマイナス6.25D以上の近視を指します。また、マイナス10.25D以上を最強度近視と呼ぶ場合もあります。
現在、主流になっている3焦点~2焦点眼内レンズ製品は、幅広い範囲の度数をカバーしていて、かなり強い近視でも完全に矯正できるケースがほとんどですが、まれにその範囲を超えた強い度数や長い眼軸長(目の前後の長さ)の方がいらっしゃいます。
そのような場合、2焦点や3焦点ではありませんが、それらとは異なった原理で多焦点の機能を実現しているProgressive眼内レンズと呼ばれる「ミニウェル・レディ」という多焦点眼内レンズがあり、最強度近視を含む強い度数の近視眼にも対応可能な、さらに幅広い度数の製造範囲と優れた基本性能を併せ持っています。
「ミニウェル・レディ」はイタリア製の多焦点眼内レンズで、コントラストがはっきりとした優れた見え方を実現している製品でもあり、プロの眼科医など、技術的に詳しい知識を持った患者さんのなかで、このレンズを希望する方もいらっしゃいます。
実は、私は自分の母(眼科医)の白内障手術を執刀したのですが、いくつかのレンズのなかで、母はこの「ミニウェル・レディ」を選び、希望したため、このレンズで手術を行いました。本人はとても満足して、その後裸眼で生活しています(以前はメガネやコンタクトレンズを使用)。ただし、このレンズは日本での臨床試験を行っていないため、日本の厚生労働省の認可を受けていない未承認のレンズです。ヨーロッパのCEマークは当然取得しています。なお、強い近視に伴って、矯正しても視力が極端に出にくいほかの目の病気や変化がある場合には、多焦点眼内レンズ自体が適さないこともあります。
Q. 強い乱視でも受けられますか?
強さの程度にもよりますが、ほとんどの場合は「トーリック多焦点眼内レンズ」という種類の多焦点眼内レンズで矯正することができます。トーリックは「乱視」の意味です。
ただし不正乱視の場合は、残念ながら矯正効果を得られません。不正乱視は角膜の形状に原因があるため、水晶体を乱視対応の多焦点眼内レンズに代えても解決することができないのです。
鈴木 高佳
鈴木眼科グループ代表
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