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「老後2000万円問題」は解決したの?
老後のお金については3年前、金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループの審議会が「老後資金が2000万円不足する」という報告書を出し、大騒ぎになりました。
この報告書は総務省統計局の「家計調査」をもとにしたもので、高齢者世帯の収入に比べて支出が月額約5万5000円多く、これが30年続くと、生活費だけで約2000万円が不足し、貯蓄を切り崩していかなくてはならないというものでした。
この報告書の趣旨は「老後のお金が2000万円足りなくなるから、今のうちら貯蓄や投資をしなさい」でしたが、「2000万円足りなくなる」というインパクトが強すぎで、大騒ぎになりました。
しかし、2020年の「家計調査」では、足りなくなる生活費が1110円余るという驚きの結果になっています。つまり「老後2000万円問題」はめでたく統計上は解決したということです。つまり「老後2000万円問題」で衝撃を受けた高齢者が、コロナ禍を機に、お金を使わずにため込むようになったから…。
果たして、そうでしょうか。コロナ禍で外出が減り、娯楽費や交際費が大幅に減っただけではなく、2020年は1人10万円の現金給付があったので、わずかですがプラスになったと考えるのが妥当でしょう。
では、「老後は安心」といえるのでしょうか。
60年間で老後生活は16年延びた!
日本は長寿化が進んでいます。総人口(2021年9月15日現在推計)は、前年に比べて51万人減少している一方、65歳以上の高齢者人口は3640万人と前年に比べて22万人増加して、過去最高になりました、総人口に占める割合は29.1%で過去最高です(総務省「人口推計」2021年)。
現状は、60歳定年が一般的ですが、65歳までは定年延長、再雇用として働くのもめずらしくありません。
一方、平均寿命は延びて、男性81.64歳、女性87.74歳で、男女とも過去最高を更新しています(厚生労働省「簡易生命表(令和2年)」2020年)。
90歳まで生きるとしたら、60歳の定年で30年間、定年延長、再雇用が終わる65歳から25年間あります。
平均余命を見てみましょう。60歳の平均余命は男性24.21年で84歳、女性は29.46年で89歳、65歳の平均余命は男性20.05年で85歳、女性は24.91年で89歳です。そして90歳に近づく頃にはさらに平均寿命、平均余命も延びると予想されます。
約60年前の1960(昭和35)年の平均寿命は、男性65.32年、女性70.19年でした。直近の2020年と比べると男性16.32年、女性で17.55年延びたことになります。