(画像はイメージです/PIXTA)

ロシアによるウクライナ侵攻後の「金融市場と円安進行」について、国際金融ストラテジストの長谷川建一氏が解説していきます。

恐ろしい…急激に「円が売られる流れ」

株価以外にも影響は及んでいます。明らかに影響が大きいのは為替相場です。米ドルインデックス(=主要通貨に対する米ドルの価格を指数化したもの)では、コロナショックでドルが買われた頃の数値を現時点ですでに上回っています[図表2]

 

[図表2]米ドルインデックス

 

そしてドルが買われる状況下で、現在、急激に円が売られる流れになってきています。

 

過去3ヵ月の米ドル・円は、115円前後で推移してきましたが、ウクライナショックに加え、その後の米ドル金利の急上昇をきっかけに上がり始めました。節目でもあった120円をあっさり抜けてしまい、高値は130円50銭を付けている状況です。

 

米ドル・円だけではなく、ユーロ・円でも円が売られるようになっています。ユーロ・円は140円手前まで上昇してしまいました。

日本円が「安全な通貨」ではなくなったワケ

ドル円でドル高が進行した要因として、日本円のもつ性質が挙げられます。

 

これまで、日本円は「安全な通貨」であり、市場が混乱した際の「資金の避難先」と考えられてきました。しかし今回はその効果が機能しなくなってしまったのです。

 

以前は市場が混乱した際、以下の3つの理由から円高圧力がかかっていました。

 

(1)金利が低下するため、相対的に低金利通貨の日本円は買いやすい

 

通常、市場が停滞すると経済が停滞し、併せて金利も低下します。しかし円は金利がほぼゼロの通貨であるため、相対的に買いやすくなっていました。

 

(2)コモディティ価格が値下がりすると、輸入割合の大きい日本円はその恩恵を受ける

 

コモディティ価格は景気が低迷すると下がるので、輸入割合の大きい日本円はその大きな恩恵も受け取っていました。

 

(3)日本は膨大な経常収支の黒字を抱えている国である

 

日本には膨大な経常収支があるので「安全な国である」「安全を求める資金の投資先になる」とみなされてきました。

 

しかし今回のケースにおいては、これら3つが裏目に出てしまったとしか言いようがありません。

 

というのもまず、これだけ市場が混乱しても、米ドルをはじめとする主要通貨の長短金利は上がり続けています。

 

かつ日本は輸入インフレに弱いという側面があります。現状、コモディティ価格は値下がりするどころかむしろ急激に上がっており、これも日本円の強みから外れてしまっています。

 

さらにコロナ以降、輸入の増大と価格上昇がみられたため、貿易赤字が8ヵ月もの間続いています。

 

2022年3月の貿易収支は4,124億円の赤字で、赤字予想額の715億円を上回りました。長期的にみると、貿易価格は右肩下がりの傾向が出ています。年度別にみてもその傾向は際立って出ているといえるでしょう[図表3]

 

[図表3]日本の貿易収支(月別)
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本記事は、幻冬舎ゴールドオンライン公式YouTubeチャンネル『「対ロシア経済制裁後の世界金融市場」円安も、日銀は金融緩和政策を変更せず』を元に作成したものです。

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