クラシックといえば「入眠にいい音楽」だが…
■同じ「悲愴」でもチャイコフスキーは覚醒、ベートーヴェンは睡眠に効く?
私はかねて「KDFC」というサンフランシスコのFM局のファンで、今はインターネットで聞いています。CMなしで24時間クラシック音楽を流す局で、同じクラシックでも、朝はやる気になる曲、夜はリラックスできる曲が選ばれているようです。日本でも聞けるのですが、時差の関係で午前中にまったりする曲が流れることがあり、どうも調子が出ません。おそらくアメリカ西海岸の時間帯に合わせて自然にそういった選曲をしているのだと思います。
クラシックは「入眠に良い」とされ、たくさんのCDが発売されていますが、覚醒用のものはありません。しかし良い眠りは良い覚醒あってこそのもので、「覚醒に良い」音楽もあるのではないか――そんな仮説をもとに、私は調査してみました。
30ほどの古典的なクラシックを選んで、20代から60代までの男女164人のモニターに、午前中と夕方に分けて聴いてもらいました。それをレーティングしたところ、「アップ系だと感じる曲」と「ダウン系だと感じる曲」がくっきりと分かれたのです。
例えば、ベートーヴェンの「運命」や、オッフェンバックの「天国と地獄」、カバレフスキーの「道化師のギャロップ」を聴いて眠くなる人はいないと思います。私たちの年代が子どもの頃には、オッフェンバックの「天国と地獄」を聴くと刷り込みのようにみんな走り出していました。
また、同じ「悲愴」でも、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴(第3楽章)」には、ほとんどの人が「気分が上がる」と答えたのに対して、ベートーヴェンのピアノソナタ「悲愴(第2楽章)」には、多くの人が「リラックスする」と答えました。その話をしたところ、興味を持ってくれた音楽会社があり、睡眠に良い曲と覚醒に良い曲を組み合わせた「Night&Day 最高の睡眠と目覚めのためのClassic」という2枚組のCDを監修しました。
■自分なりの「目が覚める曲」を取り入れる
音楽は個人的な主観も大きく、モニター調査は研究と呼べるものではありませんが、巷(ちまた)で信じられている眠気を誘うモーツァルトの“ゆらぎ”であっても、「科学的に立証されている」という域に達していません。
これは、効果があると信じて実行すれば、本来の効果とあわせて相乗的な効果が得られる可能性があるという「ポジティブ・ルーティン」の一つですから、「音楽を聴いて眠気が覚めた」という経験があれば取り入れてみるといいでしょう。もちろんロックでもヘビメタでも、K-POPでもいいと思います。
コーヒーと音楽という刺激を加えることで、覚醒のスイッチをオンにしましょう。