脂肪肝の発症リスクに「性差」があるワケ
男性は30代ぐらいから脂肪肝が増えるのに対し、女性では50歳以降から増え始め60代で脂肪肝の有病率がピークになります。
なぜ女性は、年を取ってから脂肪肝になる人が増えるのでしょうか。それには女性ホルモンのエストロゲンが深く関わっています。
エストロゲンは、女性の“お守り”といわれるほど女性の健康に関わっているホルモンです。例えば、生殖器官を発育・維持する働きや妊娠に関わる働き、また乳房の発達、皮膚、髪などをしなやかに保ち女性らしさを作る働き、さらに骨や筋肉の形成を促す、脳の機能を向上させ、自律神経を安定させる、脂質代謝にも関係しています。
エストロゲンは、思春期に分泌が始まり、30歳頃にはピークに達し、それ以降は少しずつ減少していきます。そして閉経を迎えると、卵巣からのエストロゲン分泌が停止します。日本女性の平均的な閉経年齢は、50〜51歳といわれています。閉経前の女性は、エストロゲンの作用で内臓脂肪や異所性脂肪よりもまず皮下脂肪のほうが付きやすい傾向にあります。
ちなみに内臓脂肪は、高カロリー食や高脂肪食、過食により比較的簡単にたまりやすいのですが、運動やダイエットで落としやすいという特徴があります。それに対して、皮下脂肪はたまりにくいものの、いったんたまるとなかなか取れないという特徴があります。
女性の体が皮下脂肪をためやすい仕組みになっているのは、出産・育児というライフイベントがあるためだと考えられます。
しかし閉経後は状況が一変します。女性のお守りであるエストロゲンが低下することで、脂質代謝に変化が生じてくるのです。多くの人では総コレステロール・中性脂肪、LDLコレステロールが増加し、HDLコレステロールが減少してきます。
また閉経後に女性ホルモンが大きく減少することで、女性の体では相対的に女性ホルモンよりも男性ホルモンの値が上がっていきます。男性ホルモンは、皮下脂肪より内臓脂肪を溜めやすい働きがあります。こうした理由から、閉経後の女性は、加齢に伴う基礎代謝の低下と相まって内臓脂肪が付きやすくなり脂肪肝にもなりやすくなっていくと考えられます。
一方で男性は、男性ホルモンの代表で男性らしい骨格、体型を構成するテストステロンの働きにより、女性に比べてもともと内臓脂肪が付きやすくなっています。
女性は、男性より10〜20年くらい遅れてメタボや脂肪肝の要注意世代になっていきます。脂肪肝のなりやすさや脂肪肝になる年代に性差があることには、以上のような背景があったのです。
長寿社会に生きる現代女性は、閉経から30年以上も生きていくことになります。脂肪肝対策のためにも、エストロゲンが減少していく更年期以降は、体重の増量に気を付けることが大切になります。
川本 徹
みなと芝クリニック 院長
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