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脂肪肝の種類
<“過剰飲酒しない人の脂肪肝”や“命の危機につながる脂肪肝”もある>
脂肪肝の病態を表す言葉にはさまざまなものがあります。脂肪肝があるというだけでは、肝臓の機能にそれほど影響はありません。ですが炎症を伴った脂肪性肝炎となると話が変わってきます。その辺りが、用語の意味を区別するポイントになります。
●NAFLD(ナッフルディー)nonalcoholic fatty liver disease/非アルコール性脂肪性肝疾患
⇒日常的にアルコール摂取がない、あるいは少ない人にみられる脂肪肝で、組織診断または画像診断によって脂肪肝と認められた病態を指します。具体的には肝細胞の5%以上の脂肪蓄積を認め、アルコールやウイルス、自己免疫、薬剤などが原因の脂肪肝は除きます。NAFLDには、単純な脂肪肝である「NAFL」と進行性の「NASH」の両方が含まれます。
●NAFL(ナッフル)nonalcoholic fatty liver/単純性脂肪肝
⇒肝細胞に脂肪が沈着しているだけで、炎症や線維化のない脂肪肝のことです。病態はほとんど進行しないと考えられていますが、一部はNASHに移行するとの説もあります。
●NASH(ナッシュ)nonalcoholic steatohepatitis/非アルコール性脂肪性肝炎
⇒肝細胞の傷害や炎症を伴っており、肝硬変や肝がんを発症するリスクのある脂肪肝のことを指します。
●ASH(アッシュ)alcoholic steatohepatitis/アルコール性脂肪性肝炎
⇒飲酒が原因で脂肪肝となり、さらに大量飲酒を続けることで肝臓に炎症が起きている状態のことです。これを何年も放置すれば、やがて肝硬変や肝がんへと進行していきます。
ASHはアルコール性、NAFLD(NAFLとNASHを含む)は非アルコール性の脂肪肝になります。非アルコール性の基準は、飲酒をしない、または男性の場合純アルコール換算で210g/日(純エタノール換算で30g/日、ビール中瓶1.5本程度)、女性の場合は純アルコール換算で140g/日(純エタノール換算で20g/日)が上限となります。
ちなみに、健康診断などの血液検査でAST(GOT)やALT(GPT)の数値が正常よりも高かった人は、肝炎の状態であるといえます。さらに中性脂肪や、γ(ガンマ)-GTP(AST、ALTは幹細胞、γ-GTPは胆管で作られる酵素。「トランスアミラーゼ」とも呼ばれ、アミノ酸の代謝に関わる働きをする)、コリンエステラーゼ(肝細胞のみで作られる酵素で神経伝達物質の一種を分解する働きをする)などの数値も高かった人は、ASHやNASHの可能性がありますので、医療機関を受診して詳しい検査を受ける必要があります。
近年、確実に増えているのは「NAFLD」
脂肪肝のうち近年に確実に増えてきているのが、非アルコール性脂肪性肝疾患「NAFLD」です。現在分かっていることを挙げてみると、次のような特徴があります。
<NAFLDを発症しやすい人の特徴>
●国内の有病率は30%前後(人間ドック受診者を対象とした非肥満者も含む調査からの推計2009〜2010年)
●患者数は推計1000〜2000万人
●国内の疾病原因と発症の関連を調べる観察的研究では、NAFLDの有病率は1994年の12.9%から2000年には34.7%に増加していることが分かった
●性別ごとの有病率では男性の41%、女性の17.7%がNAFLD
●小児での有病率は4〜10%
●年齢別では、男性は30代頃から増え始め40〜50代でピークとなってそれ以降少しずつ減っていく。女性は25〜44歳までは極めて少なく、50歳を過ぎると増加していく
●肥満の度合いが高いほど有病率は上昇
●生活習慣病を発症している人が多い
●自覚症状はほとんどなく、体に兆候も現れてこない
●NAFLDから肝線維化へ進む割合は2.7%
●全世界で見ると、NAFLDの推定有病率は2000〜2005年で20.13%だったのが、2011〜2015年では26.8%と増加傾向にある
●肥満でない人のNAFLDは、世界的に見てアジアでの有病率が高い
以上からNAFLDは、女性よりも男性のほうが発症しやすく、中年男性や肥満の人で有病率が高く、女性では50歳以上になると増える傾向にあります。また生活習慣病がある人は脂肪肝を合併している場合が多いことが分かります。
NAFLDにかかった人の割合の報告にバラつきがあるのは、脂肪肝自体の研究の歴史が比較的浅いことや、診断方法が確定しておらず確定診断が難しいといった事情からです。実態把握にはもう少し時間がかかると思われます。
ですがこうした年齢・性差などの特徴を知っておくことで、脂肪肝を特に警戒すべき時期が見えてくることは間違いありません。
川本 徹
みなと芝クリニック 院長
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