外国人による不動産投資が実質解禁となったベトナム
ベトナム経済の成長にともない、世界中の投資家の視線がベトナムの不動産に集まっている。まさに今のベトナムにおいて、もっとも熱い分野といっても過言ではない。そこで、本連載ではベトナムの不動産市場の現状と最新のトレンドについて紹介したいと思う。
ベトナムの不動産市場に関するもっともホットな話題といえば、2015年7月の規制緩和によって、外国人によるベトナムでの不動産投資が実質的に解禁されたことだろう。まだ不動産業界も多少二の足を踏んでいる状況だが、実際に物件を購入している外国人も多数おり、法的・税務的なリスクを正しく把握することが重要と思われる。
まず投資対象としてのホーチミン市の魅力について、改めて説明したい。ホーチミン市はベトナム一の商業都市だ。中国でいえばハノイが北京で上海がホーチミンとたとえられる。
人口は800万人、一人当たりのGDPは4000〜5000ドルといわれており、全国平均2300USドル(IMS4月時点)の約2倍、日系企業数も1200社と国内最多だ。
また、これまで国内に一本もなかった地下鉄の一号線開通が2020年に予定されている。現在は有名なグエンフエ通り付近で地下鉄工事が進んでいるが、そこから北側の2区を通ってロンタンの方に抜ける予定で、その後もどんどん整備されていく。空港も今はタンソンニャットにあるが、この先10年ほどでロンタン空港の方に移る予定とされている。
広い都市である首都ハノイ市に比べてホーチミン市は、購入場所を絞りやすいという利点もある。ハノイは物件が集中したエリアが点在しており、投資地域が明確でない上に、中心地の価格が高騰し、投資には不向きな状況にある。
また、たとえば市内の端から端まで移動するとして、ハノイの場合は渋滞に巻き込まれてしまうとタクシーで1時間以上かかってしまうこともザラだが、ホーチミン市は1区にオフィスが集まっており、タクシーで15分圏内という感じだ。住宅地も1区や3区、ビンタイン区、2区、7区と近隣にかたまっていて、住宅地を含めても片道30分圏内に収まる。
ホーチミン市の周辺にも目を向けてみたい。北部のビンズン省にはVSIPという有名な工業団地がある。日系企業も多数集まっており、大規模なイオンモールも立地している。
ただ、ホーチミン市から車で1〜1時間半とやや遠い。このあたりの日系企業の駐在員の多くはホーチミンから時間をかけて通勤していたが、最近は近辺にマンションを借りる人が増えている。
それに対してホーチミン市東側のドンナイ省は、よりホーチミンから行きやすい地区として知られている。有名な工業団地が散在しており、だいたいホーチミン市やその周辺の2区などから通っている方が多い印象を受ける。
より投資価値が高いのはアクセスの良い「2区」
ホーチミン市のなかをもう少し細かくみていこう。
中心部の1区には観光地もオフィスも集まっている。タンソンニャット空港から1区まではタクシーでだいたい15から20分ほど。2区には現在、若い日本人夫婦がたくさん住んでおり、欧米人もいちばん多く集まっている。
というのも、区内のタオディエンという地域にインターナショナルスクールがかたまっているからだ。日本人幼稚園もあり、人気のベッドタウン地区になっている。開発中の地下鉄一号線もこの2区のバイパス沿いを通るので、それも人気の一因になっているようだ。
もう少し南にある7区の特徴は、まだ新しい地区なので新しいマンションが多いのと、日本人・韓国人・台湾人小学校など外国人向け小学校が多いということ。小学生のお子さんを持つ日本人駐在員は居住地として7区を選ぶケースが多いようだ。
2区よりもやや1区までの距離があるのと、地下鉄の通り方や将来できる予定のロンタン空港へのアクセスも2区の方が優位なので、より投資価値が高いのは2区の方といえそうだ。
ビンタイン区は現時点でもサイゴンパールやマナーといった日本人が数多く住んでいるアパートメントなどがあるので、町中にも近く単純な地理的利点としては一番秀でているかもしれない。もちろん1区の方が条件はよいが、もはや物件があまりないのと、あっても非常に高いという問題がある。