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『日銀短観』の22年3月調査では、最も注目される大企業・製造業の業況判断指数(DI)が2020年6月調査以来の悪化となりました。今回の回答期間は2月24日~3月31日と、国内では全国的にまん延防止等重点措置が実施されている中、ロシアがウクライナへの侵攻を開始して以降の世界情勢を踏まえたものとなりました。ただし、想定為替レートは実勢よりもかなり円高の水準となっており、今後の想定の修正等に注目です。
ウクライナ情勢緊迫化による原材料高で業況判断DIは悪化
■4月1日に発表された『日銀短観』では、最も注目される大企業・製造業の業況判断DI(回答のうち「良い」から「悪い」を引いた割合)は、前回調査から▲3ポイントの+14ポイントとなりました。2020年6月調査以来、7四半期ぶりの悪化となりましたが、事前の市場予想よりも底堅い結果となりました。また、大企業・製造業の先行き判断DIは+9ポイントと、足元の+14ポイントからは5ポイントの悪化が見込まれています。一方、大企業・非製造業の業況判断DIは同▲1ポイントの+9ポイント、先行き判断DIは+7ポイントとなりました。
■新型コロナウイルスの収束がなかなか見通せないことに加え、ウクライナ情勢の緊迫化に伴う原油価格等の原材料価格の高騰や供給制約、世界情勢の不透明感等が影響していると見られます。
想定為替レートは実勢よりもかなり円高
■全規模・全産業の事業計画の前提となっている想定為替レートは、22年度が111.93円となりました。米ドル円相場は3月下旬に一時125円を超え、足元でも120円台前半で推移するなど円安基調となっています。今調査の回答期間は3月末まででしたが、回答基準日は3月11日だったことから、3月下旬の急速な円安は十分に織り込まれなかったと考えられます。日銀は、円安は輸出にはプラスと円安容認の見方を示し、現在の金融緩和は継続する姿勢です。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げに積極的な姿勢を示しており、日米の金利差拡大などから今後も円安傾向は続きそうです。
設備投資計画はプラス、今後も物価上昇を見込む
■22年度の設備投資計画は、GDPの設備投資の概念に近い、ソフトウエア・研究開発含む・土地投資額除くもので、全規模・製造業では前年度比+6.8%、全規模・全産業では同+3.2%となっており、企業の設備投資の意欲は底堅いと見られます。また、企業の物価見通しでは、物価全般の見通しに対して全規模合計・全産業で1年後に前年比+1.8%、3年後に同+1.6%、5年後に同+1.6%となりました。いずれも前回調査よりも今後の物価上昇を見込む格好となりました。
■ウクライナ情勢は未だ不透明感が高く、今後も原材料価格高騰等の影響は考えられるものの、企業の業況判断は底堅く、新型コロナウイルスの感染が落ち着き、景況感が上向いていくことが期待されます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ウクライナ情勢緊迫化を織り込み悪化した『日銀短観』【専門家が解説】』を参照)。
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