高気密・高断熱住宅ならエアコンの風の不快さも消失
断熱性能が低い家は、上述の通り冷輻射がかなり不快なことや足元が寒いことに加えて、エアコンの風が不快に感じられることも快適性が低い要因です。
「エアコンの風が嫌い!」という方は少なくないと思いますが、これはエアコンのせいではなく、住まいの断熱性能が低いために、エアコンが必要以上に頑張って、高い温度の強い風を吹き出すために、それが体にあたり、不快に感じられるのです。
これが、高気密・高断熱の場合だと、エアコンは穏やかな温度の風を静かに出すので、エアコンの風の不快感は大幅に低減されます。エアコンの風や音は、実はかなりのストレスになりやすく、このストレスが軽減されることも、高気密・高断熱住宅の空間が快適な要因のひとつです。
また、夏はこの逆のことが起きています。夏は外気だけでなく、日射の影響もあり、壁や天井が熱くなっています。いわば、弱い赤外線ストーブに包まれているような状態ですから、エアコンで冷やしても、なんだか変に暑いと感じるのです。高気密・高断熱住宅ならば、夏の冷房設定温度がかなり高い温度でも快適です。
これは、体にも優しいのはもちろんですが、光熱費がどんどん高くなっているなかで、お財布にも優しいことはいうまでもありません。
さらに睡眠の質も上がる!
また、慶應大学理工学部の伊香賀研究室の研究(図表5)によると、睡眠の質が上がることも明らかにされています。簡単にいえば、夏に暑くて寝苦しいと感じることもなければ、冬に重たい分厚い布団をかける必要もないので、睡眠の質が上がるのだと思われます。
このことにはおまけがあります。高気密・高断熱住宅では、冬用の分厚い布団や厚手の室内着の多くなどが不要になります。そのため、普通の性能の家に比べて、収納スペースがかなり少なくても大丈夫です。その分、住空間を広く使えますから、特に土地代の高い都市部における経済的なメリットは大きいと思います。
また、断熱性能を高めると、図表6のように夜間頻尿の症状が出る確率が1/2に低減することも明らかになっています。これも当然、睡眠の質の向上につながりますから、生活の質が上がります。
その他、第5回で説明した通り、高気密・高断熱住宅は、家事が楽になりますし、子どもも風邪をひきづらくなります。これらも、生活の質を高めることに繋がります。
それから、高気密・高断熱住宅は、遮音性も高まるので、街中の住まいでも、静かな居住環境が実現できることも大きいといえます。
これから住まいづくりを進める方は、ぜひこのあたりのことを頭に入れて、住まいの性能を検討することをおすすめします。
高橋 彰
住まいるサポート株式会社 代表取締役