小4の壁を無視して続けた結果、数学でつまずく子も?
小学生が多く通う塾には、読み・書きや計算を訓練するプリント塾というものもあります。当塾の生徒で、計算力があって学習意欲も高いのに、中学に入ってから数学でつまずく子たちが毎年います。計算は速いので本人は数学が得意と思っているのですが、実力テストや模擬試験では、他教科は高得点を取っていても、数学だけはボロボロです。中学1年1学期まではなんとかついていけていた子も、数学の難度が高くなる中学1年2学期になるとそういう姿が明らかになってきます。
当初は私たちも「決して学力が低いわけではないのに、なぜ数学だけこんな点数なのか?」と驚き、頭を抱えたものです。ところが、そういう生徒や保護者にこれまでの学習歴を尋ねてみると、「地域のプリント塾に小学校からずっと通っていた」と口をそろえて言うのです。
そのようなプリント塾では、小学校低学年から計算を徹底的に繰り返します。とにかく速く解くことが良しとされ、複雑な計算も途中式を書かず、すばやく解答するのが美しいと指導されます。小学生でも、なかには高校生が解くような複雑な計算をすらすらと解答する子もいます。
ただ、小学校の算数はある程度優れた計算で乗り切れますが、小学4年生から抽象的思考が、中学に入って数学となると論理的思考力が求められるようになり、それだけでは徐々に太刀打ちできなくなります。しかし、プリント塾で鍛えられてきた子たちは「なぜそうなるのか」と論理を追って考える習慣がありません。途中式も書きませんから、実力テストで間違えても、どこでどう間違ったのかの理由も分からないのです。
こういう形にはまった機械的な解き方が身についてしまうと、それをあとから修正するのは実はとても大変です。中1の春に入塾してきたある生徒は、そうしたこれまでのやり方を修正するのに8ヵ月もかかりました。
小学校の中学年頃までは「基礎的な計算力を身につける」という目的でプリント塾を活用するのもいいと思います。しかし小学校4・5年以降もそのまま通い続けていると、むしろ数学的な思考力が育たなくなることがあるのです。新興国へ売り出しているコンテンツは、経済が成熟している国の生徒には、残念ながら不足する部分が多いと言わざるを得ません。社会で求められる能力は経済の成熟度合いによって変化するからです。こういった観点で調べてみると新たな発見があるかもしれません。
大坪 智幸
株式会社花咲スクール 代表取締役、本部校教室長
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