(※写真はイメージです/PIXTA)

一口に「塾」といっても、学習サービスの内容や質にはかなり大きな差があります。「大手の塾なら安心」「とりあえず通わせるだけでも、少しは学力がつくだろう」と気軽に考える保護者も少なくありませんが、残念ながらそうはいきません。花咲スクール代表・大坪智幸氏は、教育機関の看板を掲げていながら、およそ教育とは呼べない営利目的に走っている塾が少なくなかったり、よかれと思った「塾選び」がかえって学力アップの妨げになったりするケースもあると指摘します。高い費用がかかるからこそ知っておきたい、塾の活用方法について見ていきましょう。

小学生で英検2級…“検定合格を目指す指導”の本末転倒

少し話は変わりますが、幼児や小学生に、どんどん上級の検定試験を受けさせるような英会話・英語学習塾も、注意が必要だと思っています。

 

今時の親は、「わが子に、グローバル社会で活躍する人材になってほしい」「英語で苦労をさせたくない」という気持ちが強くあるようです。そこで「小学生で英検2級取得!」といった英語塾のキャッチフレーズを見ると、指導力が高いと感じ、うちの子もそういうところで学ばせたいと思うのでしょう。

 

しかし、英検2級というのは、大学入試改革や学習指導要領で「高校終了時に、半数の生徒が取得している」ことを目指す達成目標です。設問の英文もSDGsについての話題も多いですし、物語文の登場人物の心理なども、人生経験の少ない小学生ではおそらく理解できないだろうと思うような内容ばかりです。

 

そういう検定試験で小学生をどうやって合格させるかというと、「4行ぐらいの英文の質問ならば、ラスト2つのコンマに答えがある」といったことを教えます。英文を理解させるのではなく、完全にテクニックだけで点数を稼ぐのです。こんな指導法で検定合格を勝ち取ることに、意味があるとは思えません。

 

私自身は、こういうテクニック優先の英語指導、試験対策としての英語教育には、強い疑問を抱いています。

 

特にこれまでの日本の英語教育は、コミュニケーションの道具としての語学学習という意味合いが強かったと思います。私の友人は学生時代に英語圏に留学をして、語学人材として企業で勤務しています。ただしやっている業務の内容は、いわゆる翻訳や通訳です。誰かの考えを別の誰かに伝えるという仕事で、これはそう遠くないうちに機械に取って代わられていくと思います。

 

これから重要になるのは、英語を扱えるだけでなく、英語を使って何を表現できるか、他国の人と対等に議論ができるかどうかです。そのためには英語習得の前に、日本語でのしっかりした思考力や表現力を養成することが大切です。英文を理解するときも、日本語でまず理解したり思考をはたらかせたりし、そこから自分の考えを英語で書いたり発表したりするという「読む・書く・聞く・話す」の4技能を育成していく必要があります。

 

当塾でも英検受検の指導を行っていますが、小学生が受けられるのは英検5級まで(それ以上の級も本当に読めてしまう例外的な子はおり、先に進ませています。そういった生徒たちの共通点は国語がよくできるということです)としています。日本語での知識や思考力が育ってきてから上の級を受験すれば、テクニックや借り物ではない、本物の実力を養えるからです。

次ページ小学校時代の「プリント塾の通い方」にも注意

※本連載は、大坪智幸氏の著書『デタラメ受験戦争 失われた「学びの本質」』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

デタラメ受験戦争 失われた「学びの本質」

デタラメ受験戦争 失われた「学びの本質」

大坪 智幸

幻冬舎メディアコンサルティング

知育と徳育の両面から指導すれば、子ども一人ひとりの生きる力を引き出せる。 「塾屋」が提言する学びの本質とは? 学習塾を経営し自ら教壇に立って指導をする著者は、現在の受験本位の教育は本当の意味で子どものために…

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