妻が長生きする可能性が大なら、基礎年金を増やす
50代になったら必ず知っておきたい「年金3点セット」。
【年金3点セット】
1.「ねんきん定期便」を熟読して、その意味をしっかりと理解する
2.「ねんきんネット」に登録して、自分の年金額シミュレーションを行う
3.日本年金機構の「窓口相談」に申し込み、できれば夫婦で相談に行く
ここからは『2.「ねんきんネット」に登録して、自分の年金額シミュレーションを行う』の後半を解説します(前半は『年金額、あまりの少なさに呆然…ねんきんネット「自分の年金額シミュレーション」で思い知る現実』参照)。
日本の公的年金制度の優れている点は、年金受給の「繰り下げ」に関して、「何歳まで繰り下げる」とあらかじめ決めて宣言する必要はなく、必要になったタイミングで受給の申請をすれば良いという点です。しかも1カ月単位で申請できて、増額された年金額を終身で受給できます。
また、申請時点でまとまった金額が必要ならば、それまでの年金額を一括で受け取ることも可能です(その場合、その後の年金額は繰り下げをしなかった場合の通常の年金額になります)。
会社員の場合は、基礎年金と厚生年金のそれぞれについて、繰り下げ時期の選択ができます。
年金の繰り下げ受給について、私は最優先で妻の基礎年金(国民年金部分)を75歳まで繰り下げ、理論最高値を目指すことを提唱しています。
基礎年金は、40年(480カ月)保険料を払うのが満額です。通常の65歳から受給の場合、2022年1月現在では、年金額は、78万900円です。これを75歳まで10年繰り下げることにより、1.84倍の143万6800円にすることができます。
月額に換算すれば、6万5000円が約12万円に増えるのです。
これに厚生年金が上乗せされます。
もちろん夫婦2人ともに75歳まで繰り下げて理論最高値を目指せば、金額は2倍となり、基礎年金だけで月額24万円になります。
これに厚生年金が上乗せされるので、75歳からの生活で極端に贅沢な暮らしをしない限り、何歳まで生きたとしても終身、ゆとりある生活が送れるでしょう。
厚生年金は妻が専業主婦期間の長かった家庭(我が家もそうです)では、妻の年金が少なくなります。
平均寿命で言えば妻の方が長生きする確率が高いので、その時に基礎年金をしっかり増やしておければ、自分の厚生年金が少なくても、遺族年金として夫の厚生年金の4分の3が受給できるので、おひとり様生活でも不安が減ります。
だから、最優先で妻の基礎年金を理論最高値にしておくのです。
次に夫の基礎年金の繰り下げ、最後に夫の厚生年金の繰り下げという順番です。
実は夫の厚生年金も繰り下げれば、70歳なら1.42倍、75歳なら1.84倍に増えるのですが、夫が先に亡くなった場合に妻が受給できる遺族年金に、この増額分は反映されません。
もともとの65歳から受給した場合の厚生年金額の4分の3という計算となり、遺族年金は繰り下げによって増えることはないのです。
だから繰り下げの優先順位は、妻の基礎年金が第一、というのが私の考え方です。ただし、どちらがいつ死ぬかは神のみぞ知るです。繰り下げている間に亡くなって、年金を1円も受給できなかったということも、もちろん起こり得ます。
だからこそ「年金保険」と言うように、年金は保険なのです。
でも人生100年時代の現在は、貯金を使い果たしてしまう「長生きリスク」の方が大きくなっているので、今は100人に2人程度しかいない(老齢基礎年金で2.2%、老齢厚生年金で1.5%)年金の繰り下げ受給が今後は大きなトレンドになっていくと私は見ています。
それだけ長く働く人が増えますし、70歳まで仕事をするのは当たり前という社会になるでしょう。
ここで「年金の繰り下げ受給」について、注意点を3点だけお伝えします。
受給額が増える(5年で142%、10年で184%)というメリットはあるものの、以下のデメリットもあるので、よくチェックしたうえで「繰り下げ」について判断してください。
1.年金受給額の増加により税金や社会保険料も増えるので、年金手取り額の増え方はそのままではない
2.年下の配偶者が65歳になるまで受け取れる加給年金(年額約39万円、ただし対象になる条件あり)を繰り下げ期間中は受け取れない
3.遺族厚生年金は繰り下げ後の増額された金額ではなく、増額される前の金額をベースに計算される
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