(※写真はイメージです/PIXTA)

最近、従業員が連絡もなく突然出勤しなくなる事象が増えています。従業員の無断欠勤は業務に支障がでてしまいますし、他の従業員にも迷惑がかかります。無断欠勤が長期にわたる場合、企業としては従業員の給料のカットや解雇を考えたいところですが、法的な問題もあるのです。このような場合に、企業としてどのような対応を行えばよいのかについて見ていきましょう。社会保険労務士・柴垣和也氏が解説します。

企業が取るべき対応③ 本人と連絡が取れない場合は?

従業員の無断欠勤が続いて連絡が取れない場合は、後々のトラブルを避けるためにも、以下のような連絡を取る努力をして最善を尽くすことが大切です。

 

1. 従業員の自宅を訪問する。

2. 身元保証人に連絡する。

3. 書面等で出勤の催促をする。

 

いずれの方法でも連絡がとれなくて無断欠勤が続いた場合は、就業規則や労働契約書に無断欠勤に関する文言(「2週間以上で懲戒解雇となる」や「2週間以上で自然退職となる」など)が記載されているかを確認します。

 

就業規則に、無断欠勤が続いた場合の自然退職や懲戒解雇について記載されている場合は、自然退職や解雇などの退職手続きを進めます。

自然退職や解雇を行うには「就業規則上の規定」が必要

自然退職はあくまで最終手段…まずは「出勤を促すための努力」が必要

自然退職とは、従業員や企業の意思表示がなくとも労働契約が終了して自然に退職となることをいいます。

 

自然退職を行うには、就業規則に自然退職に関する規定を設けておくことが必要です。就業規則に自然退職に関する規定が設けられていた場合は、従業員が無断欠勤を続けたら自然に退職とすることができます。

 

但し、従業員にとって著しく不利な規定は、合理性を欠くことから無効と判断とされる可能性があるため注意が必要です。

 

この就業規則に基づく自然退職は、最終手段という位置づけのため、出勤を促すための努力はしなければなりません。また、自然に退職とすることができるとはいえ、自然退職を巡るトラブルを防ぐためにも、退職通知書を従業員に送ることをお勧めします。

 

■就業規則があっても「社会通念上相当であると認められない」解雇は無効

解雇とは、使用者からの申し出による一方的な労働契約の終了のことをいいます。

 

無断欠勤が2週間以上続いた場合、懲戒解雇となる旨の規定を就業規則に記載している企業は多くあります。なぜなら、従業員の無断欠勤が続いた場合であっても、就業規則に記載していなければ懲戒解雇にすることはできないからです。

 

また、通達(S23.11.11基発1637号)でも、正当な理由なく無断欠勤が2週間以上続いて、会社側の出勤の催促に応じない場合には、従業員を解雇できるとされています。

 

労働基準法第20条では、「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」と規定されています。

 

この場合は本人への通知が必要なため、連絡が取れない状態が続いていれば解雇することができなくなりますので注意が必要です。

 

また、労働契約法16条では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定されています。

 

この規定により、たとえ就業規則に記載してあったとしても、社会通念上相当であると認められない場合は無効になります。そのため、無効にならないためにも無断欠勤の証拠を揃えておく必要があります。

<まとめ>

無断欠勤が続いた場合の従業員への対応については、法的に規定されているわけではありません。

 

そのため、無断欠勤が続いた場合の対応として、就業規則へ自然退職や懲戒解雇について記載しておく必要があります。無断欠勤を続ける従業員への対応に困った場合は、是非一度、プロである社会保険労務士にお気軽にお問い合わせください。

 

 

柴垣 和也

社会保険労務士法人クラシコ 代表

社会保険労務士

 

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