今回は、不動産投資で「レバレッジ」が効かせられる理由などを見ていきます。※本連載は、株式会社アセットビルドの代表取締役・猪俣淳氏の著書、『誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略』(住宅新報社)の中から一部を抜粋し、不動産投資をどのような方向性で組み立てるかを紹介していきます。

不動産投資家は「デット投資家」ではない

前回に引き続き、不動産投資にもメリット・デメリットについて見ていきます。

 

(5)購入する不動産を担保にして融資が受けられるのでレバレッジが効く

 

不動産以外の投資の場合、基本的には投資する金額相当の投資しかできません。もちろん株式投資などでレバレッジを効かせることはできますが、保証金を入れた信用取引のことを指しますので、100万円の手付金を入れておき、後から900万円払うので1000万円分の株を買うといった仕組みになります。

 

その間に株価が30%上昇し、1000万円で取得した株が1300万円になれば、残りの900万円を払っても手元に400万円が残り、元手の100万円はわずかな期間で倍になったということになります。

 

逆に30%値下がりすれば、1000万円が700万円になりますから、残金の900万円を支払うためには、あと200万円どこかで用立てないといけないということです。元手の100万円を失って、さらに200万円の穴をあけるわけです。

 

不動産投資におけるレバレッジは、これとは全く考え方が異なります。

 

簡単に言ってしまえば、物件自体のネット利回りと、金融機関が求める利回りのギャップを利用するということです。ただ、その差がプラスだと思っていたものがマイナスに転じた場合、同じ力でマイナス方向にも影響するということにおいては似ているかもしれません。

 

金融機関は、債権者として、その不動産に出資する「デット投資家」です。不動産投資家は資本の部分でその不動産に出資する「エクイティ投資家」です。

 

借入れをたくさんすれば、必ずレバレッジがプラスに働いて儲かるかというとそうとは限らないのですが、上手に使えば物件自体がもつ利回りのパフォーマンスだけに頼ることなく、大きな利益を安全に生み出すことも可能です。

投資家として物件の価値も上げられる不動産

(6)工夫次第で収益性を高めることができる

 

不動産投資以外の投資ではいろいろな分析をして銘柄や商品を選択していきますが、あくまでも受動的な情報の受け手としての立場になります。もちろん自分の勤務先の株や社債に投資している人であれば、会社の業績アップの一助として関わることはできるでしょう。あるいは自分が投資している会社の商品を、消費者として応援してあげるということもできるかもしれません。

 

不動産投資の場合は、投資家として物件の価値を上げることができます。例えば、掃除を頻繁に行って清潔な状態を保つというのも、価値を上げるひとつの方法です。

 

TVモニタフォン・防犯ガラス・ディンプルキーなど、セキュリティを強化してより長く住んでもらうように入居者にアピールしたり、外装を塗り替えたり、エントランス部分には自然石やタイルを施してグレード感のある物件にして、賃料をアップするなど、いろいろなことを主体的に実施することができます。

 

収益性を高めることは、同時に物件の価格を高める効果をもたらします。

 

ポイントは営業純利益(NOI)を高める工夫と、売却する場合に買主から見た物件の価格を高める工夫です。「V=I/R」(V:価値、I:NOI、R:キャップレート=期待利回り)の公式に当てはめると、分子であるNOIを高める努力は、すなわち物件価格を高めるということがおわかりいただけると思います。

 

例えば、リフォームや設備の更新、管理状況の改善などを行うと賃料は上昇し、また高い水準を維持します。入居者サービスを充実させて、入居者の平均居住年数を長くする努力をすると入居者入替えに伴う原状回復工事や募集にかかるコスト、空室で稼動できない期間の圧縮などができますから営業純利益(NOI)は上がります。

 

空室期間を1日でも少なくするために、退去予告から内装手配、条件決定、募集活動と、一連の流れをつくっておくことも必要でしょう。また、需給ギャップをリサーチして、間取りやプランの見直し・改装をすることよって空室率を押し下げることもできます。

 

こうやって賃料水準や稼動状態が満足のいく物件にすることができれば、そうでない物件あるいはそうでなかったときよりも、リスクが軽減され期待利回りを押し下げます。分母であるキャップレートを小さくする効果をもたらすわけですから、分子の増加と相乗効果を得て、解である価値(V)を大きく膨らませる結果になります。つまり価値が高くなったということです。

 

地域的な条件を反映したキャップレートは、購入する段階で将来性も含め予想・判断するしかありませんし、稼動期間中も外部要因に左右されます。ただし、「物件独自の要因」による部分については、自分の主体的な努力で改善することが十分に可能です。

 

キャップレート(R)の構成要素は、

 

「無リスク金利(rf)+リスクプレミアム(rp)−NOI成長率(g)」

 

投資家に、よりリスクが低いと思わせるような状態をつくり上げていくことはリスクプレミアム(rp)を押し下げるため期待利回りを下げ、それは同時にNOIを押し上げる効果をもつので、物件の価格が大きく上がるということです。

本連載は、2016年3月31日刊行の書籍『誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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