エボラ出血熱の症状とエボラウイルスの特徴
エボラウイルスに感染すると、2~21日間(平均1週間)の潜伏期間を経て、突然の発熱、頭痛、全身のだるさ、筋肉痛、喉の痛みなどが現れ、その後、嘔吐、下痢、胸の痛み、出血(吐血、下血)などが現れます。最悪の場合は発症から7~10日で死に至ります。
エボラウイルスは患者の体液(血液、分泌物、吐瀉物(としゃぶつ)、排泄物など)や、患者の体液に汚染された物質(注射針など)に触れた際に、ウイルスが傷口や粘膜から侵入することで感染します。つまり接触感染に限られ、空気感染や飛沫感染はないので、しっかりとした感染対策を行えば、容易に感染することはありません。
一方で回復後も、筋肉や関節の痛み、視覚や聴覚の問題が生じるケースがあることから、ウイルスの体内への残存が疑われています。特に精液へのウイルス排出は最長60日前後まで続くとされ、アウトブレイクの終息宣言が出された後に患者が再び発生する事例の要因の1つと考えられています。承認されたワクチンや治療薬はまだありませんが、臨床研究で効果が認められた薬剤もあります。
エボラウイルスはRNAウイルスで、その形状はよく見かける球状のウイルスとは異なり、ひも(糸)状をしています。直径は約80ナノメートル、長さは500ナノメートルから1000ナノメートルと、新型コロナウイルス(直径120~160ナノメートル)やインフルエンザウイルス(直径80~120ナノメートル)と比べて巨大です。
エボラウイルスの表面にはGPタンパク質という糖タンパク質の突起があります。これが宿主細胞の表面にある受容体と結合することで、ウイルスは細胞内に侵入できます。GPタンパク質と結合できる受容体はマクロファージや樹状細胞などの免疫細胞にも存在し、エボラウイルスはこれらの免疫細胞に侵入して破壊するので、生体は免疫力が低下します。
一方、免疫機能はこのGPタンパク質を抗原とする抗体を作り出して、エボラウイルスを中和しようとします。しかしエボラウイルスは、sGPタンパク質という「おとり」の分泌物を大量に作って放出します。
抗体はおとりのsGPと結合してしまい、エボラウイルス本体のGPタンパク質に結合できなくなると考えられています。このようにエボラウイルスは巧妙な免疫回避のしくみを持っているために、致死率が高く非常に危険なのです。
川口 寧
東京大学医科学研究所 感染症国際研究センター長
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