【羽生善治】頂点を極めた「絶対王者」50代棋士としての戦い

将棋の対局はインターネット中継により、ファンたちが手軽にみられる時代になった。しかしその一方、中継だけでは伝わらないこともある。カメラに映らない光景、対局室のマイクが拾わない言葉…。彼らが胸に秘める闘志や信念は「文章にしないと、後に残らない」。将棋界を10年以上取材してきた朝日新聞の村瀬信也記者が、勝負師たちの姿を追う。今回は、「羽生善治」。

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新しい時代の感覚、発想を吸収して向上する

2021年9月。私はウェブ会議サービス「Zoom」で羽生にインタビューをした。前年の藤井聡太との対戦や自身の今後について尋ねるためだ。Zoomの使用は羽生の提案によるもの。会議の日時を設定するメールが羽生から届き、恐縮した。

 

まず、白星を挙げた藤井との対局について聞いた。藤井がタイトル保持者になってからは初めての対局だったこともあり、対戦を楽しみにしていたという。横歩取りは近年下火になっているが、羽生にとっては、これまでにも急所の一番で度々採用してきた伝家の宝刀と言える戦法だ。

 

「全然ダメになったわけではありません。それまでの藤井さんとの対戦ではやっていなかったので、どんな戦いになるのかなと思いました」。戦型選択の背景には好奇心もあったようだ。

 

勝利に結びついた後手4八歩を打った局面では、まだ形勢に自信があったわけではなかったという。「他の手では成算が持てなかったので。勝負手気味の手でした」。その上でこう語った。「際どい変化でこちらに分がありました。運が良かったです。うまく指せた一局だったと思います」。藤井と戦う上での一定の手応えをつかんだことをうかがわせた。

 

その後2人の対戦は、2021年11月の王将戦挑戦者決定リーグ戦まで組まれなかった。羽生は「できるなら、もっと間隔を詰めて対戦したい」という。

 

「棋譜だけではわからず、長い持ち時間で実際に指してみて初めて見えてくるものがあります。自分には考えられないような手を指されることもある。新しい時代の感覚、発想を吸収することが、自分自身の向上につながると思っています」

 

強者との対戦を通じて実力を高めようとする姿勢は、ベテランと呼ばれる年代になった今も変わりがない。

 

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朝日新聞 記者

1980年東京都生まれ。
早稲田大学将棋部で腕を磨き、2000年の学生名人戦でベスト16に。
2003年、朝日新聞社に入社。
2008年に文化グループ員になり、2011年から将棋の専属担当に。大阪勤務を経て、2016年、東京本社文化くらし報道部員になり、将棋を担当。
名人戦や順位戦、朝日杯将棋オープン戦を中心に取材。

Twitter: @murase_yodan

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著者紹介

連載将棋記者が迫る 棋士の勝負哲学

本記事は『将棋記者が迫る 棋士の勝負哲学』(幻冬舎)を抜粋・再編集したものです。

将棋記者が迫る 棋士の勝負哲学

将棋記者が迫る 棋士の勝負哲学

村瀬 信也

幻冬舎

藤井聡太、渡辺明、豊島将之、羽生善治…… トップ棋士21名の知られざる真の姿を徹底取材!! 史上最年少で四冠となった藤井聡太をはじめとする棋士たちは、なぜ命を削りながらもなお戦い続けるのか――。 「幻冬舎plus」…

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