新型コロナウイルスの感染者が世界最多のアメリカでは、8月31日時点での累計感染者数がついに600万人を超えました。ニューヨーク市の学校のみが9月末の再開を予定するなか、多様性を重要視する富裕層が、我が子を通わせたいと注目する「ボーディングスクール」は、どのような予防措置を実施しているのでしょうか。本記事では、SAPIX YOZEMI GROUPの海外事業開発部長・髙宮信乃氏が東海岸を中心に、北米にあるボーディングスクールが実施する「新型コロナウイルスへの予防措置」について解説します。

米国で新年度に学校を再開できているのは私立校のみ

新型コロナウイルスの感染者が世界最多のアメリカでは、8月31日時点での累計感染者数がついに600万人を超えました。現時点でアメリカ国内のパブリックスクール(公立校)は学校再開を果たせておらず、唯一ニューヨーク市の学校のみが9月末の再開を予定しています。

 

ニューヨークに拠点を置き、北米のボーディングスクールを専門として扱う弊社には、9月に新年度を迎えた各学校の対応に関して多くの質問が寄せられています。

 

新型コロナウイルスのエピセンターの一つとされたニューヨークは、外出禁止令をはじめとする様々な施策が功を奏し、7月31日にはついに死亡者が0人となるなど、事態収束に向けた期待感が高まりました。

 

ボーディングスクールが多く集まるマサチューセッツ州、コネチカット州、ニューハンプシャー州、ヴァーモント州、ペンシルベニア州、メイン州も同様で、感染者数は比較的落ち着きを見せていたことから、東海岸の多くのボーディングスクールでは新年度の対面授業再開を目指し、夏休みの間、綿密に準備を重ねてきました。

 

この9月、最終的に対面授業再開に踏み切ったかどうかは、州ごとの感染者数はもちろん、学校の規模や寮生の割合などによっても異なります。

 

たとえばマサチューセッツ州のなかでも、対面授業を再開した学校もあれば、少なくとも最初の1学期目は完全なオンライン授業の実施を決定した学校もあり、最終的にはそれぞれの特性を考慮し各学校が判断を下しています。

 

[図表1]新年度オリエンテーション新型コロナウイルスに配慮し、新年度のオリエンテーションは野外で実施された(The Fessenden School)

 

国に応じた渡航制限や学生ビザの発給における事情が、選択に影響を及ぼしたケースもあります。マサチューセッツ州のある学校は、全校生徒数に対する寮生の割合が25%と、比較的小規模のボーディング(寮生活)プログラムを提供していました。

 

この学校では9月、対面授業再開を決定しましたが、実は多くの主に留学生(寮生)が渡航規制や学生ビザの取得が困難といった理由で渡米できないことが判明。問題なく渡米できる日本人を含めた留学生についても、学校に戻っても他に寮生がいないのでは意味がないという理由で、結果的にオンライン授業を選択することとなりました。

 

東海岸のボーディングスクールが対面授業再開という選択肢を検討できた一方、それ以外の地域にキャンパスを構えるボーディングスクールの多くは、生徒とコミュニティの安全を最優先に考え、リモート授業をもって新年度を再開しています。

 

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