医療の発達等により、いまも延伸を続けている平均寿命。この数字を無根拠に信じ、「まだ元気でいられる」と油断していると、思わぬリスクを負うことになると、のぞみ総合事務所代表司法書士の岡信太郎氏は警告します。みていきましょう。

家族、健康、財産…「認知症」問題が苦しめるあれこれ

認知症は様々な問題をはらんでいます。家族の問題、健康の問題、財産の問題とその影響は多岐に渡ります。

 

[図表2]認知症高齢者の将来推計
[図表2]認知症高齢者の将来推計

 

認知症に関する相談の特徴。それは、認知症になった本人以上に周りの人が悩み苦しんでいる点です。親の定期預金を解約できない子ども、本人の財産管理をどうしたらよいのか分からないケアマネージャー、入所者の郵送物の対応に困る施設……。

 

そもそもどこに相談に行くべきか、迷われるケースもあります。中には、役所から警察に行き、法律の無料相談会に参加し、ようやく司法書士である筆者の事務所にたどり着いた方もいらっしゃいます。

 

本人と家族の関係も千差万別です。家族が本人のために色々と立て替えていることもあれば、本人のお金を自分の生活費のために使い込んでいるケースもあります。家族の現状については、良好かどうかを含めその関係性をしっかりと見極めることがとても重要です。

 

また、認知症は健康問題そのものでもあります。部屋がぐちゃぐちゃで衛生環境が悪化していたり、飲酒ばかりできちんと食事をとれていないケースがあります。そのことから、認知症以外の病気へとつながります。

 

逆のパターンもあります。病気をきっかけに、認知症へとつながってしまうケースです。典型的な例が、脳梗塞や脳出血により脳細胞がダメージを受け、認知症の症例である記憶障害や見当識障害が出てしまうものです。

 

そしてさらに、この健康問題が財産に関わる問題へと発展します。記憶障害などによって、本人が自分の財産を管理することが難しくなります。通帳を紛失したり、支払いがまったくできていなかったりと、本人が意図したわけではないのに自分の財産の保全や運用に不都合が生じるのです。

 

そうすると、誰が本人に代わり、財産を管理するのかという課題に直面します。その場合、有力な候補者は家族です。ATMなどを利用して本人を上手くサポートできれば問題はないでしょう。

 

ただし、家族間で争いになるケースは注意が必要です。通帳を預かっていた人が他の家族から使途を疑われ、後々トラブルに発展することも珍しくありません。また、実際に、家族や知人が本人に黙って使い込んでいるケースもあります。

 

最近では、頼める家族がいない方も増えています。

 

認知症の方の財産を一体誰が管理すべきか、あなたや家族には大きな課題がのしかかります。

 

 

岡 信太郎

司法書士のぞみ総合事務所

代表司法書士
 

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本記事は、岡信太郎氏の著書『財産消滅~老後の過酷な現実と財産を守る10の対策~』(ポプラ社)から一部を抜粋し、再編集したものです。
※登場人物は全て架空の人物であり、守秘義務に反しないようにストーリーを展開しています。

財産消滅 老後の過酷な現実と財産を守る10の対策

財産消滅 老後の過酷な現実と財産を守る10の対策

岡 信太郎

ポプラ社

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