パートやアルバイトの有給休暇、いくら支払うべき?
従業員が有給休暇を取得した場合には、いくら支払えば良いのでしょうか。賃金計算の方法は3つあります。
<有給休暇取得時の賃金計算の方法>
①通常どおり勤務した場合の賃金にする
②平均賃金を計算する
③標準報酬月額とする
このうち3番目の標準報酬月額は、正社員のみが対象になりますので、ここでは残りの2つについて考えます。
多くの会社では、有給休暇を取得した日の賃金は、通常どおり勤務した場合と同じにされています。
月給制の場合、通常の欠勤であれば給与が減額されるところを、有給休暇を取得すれば減額されず本来の給与を受け取ることができます。
時給制の場合、有給休暇を取得した日に通常勤務すべき時間に相当する金額が支給されます。
計算は、雇用契約に定める1日の所定労働時間によって行います。
もし、曜日その他によって所定労働時間が異なるなら、「有給休暇を取得した日に出勤していた場合、所定労働時間がどうなっていたか」により、有給休暇を取得した日の賃金が決まります。
企業によっては、パート・アルバイトの所定労働時間が日によってバラバラということもあるでしょう。
その場合、平均賃金を計算した方が公平になるケースもあります。
平均賃金によって定める方法であれば、有給休暇を取得した日の所定労働時間が何時間になるかを決める必要がなくなるからです。
ただし、平均賃金は計算するタイミングで変わるので、毎月再計算が必要になります。
有給休暇の賃金計算方法を決めたら、就業規則に記載する必要があります。その都度、計算方法を変えることはできません。
パートやアルバイトに「年休の取得義務」はある?
■取得義務の対象は「年10日以上の年次有給休暇が付与される人」のみ
2019年4月、労働基準法が改正され、全ての会社において、年次有給休暇の日数のうち年5日について時季を指定して取得させることが義務付けられました。
ただし対象者は、年10日以上の年次有給休暇が付与される従業員に限ります。
図表2によりますと、パート・アルバイトの場合、週4日勤務であれば3年6ヵ月経過後、週3日勤務であれば5年6ヵ月経過後から対象となります。
年10日以上の有給休暇が付与されるまでの間は対象とはなりません。また、出勤日数が週2日以下のパート・アルバイトは対象になりません。
■取得させなかった場合、一人あたり「30万円以下」の罰金
年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合、労働基準法第120条に基づき、30万円以下の罰金が科されることになります。
とはいえ、有給休暇を年5日与えていないことで、すぐに罰則を受けるとは限りません。多くの場合、まず労働基準監督署の監督指導を受け、違反している状態の是正と問題の解消を目指すことになります。
■年休の「計画付与」を行う場合
計画付与とは、年次有給休暇のうち、5日を超える分については、労使協定を結べば、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度のことです。
では具体的に、どのようなタイミングで計画付与を行うことができるでしょうか。
例えば、夏季休暇や年末年始の休暇として、計画付与を利用することができます。
または、カレンダー上の祝日が飛び石になっている箇所を埋めるように付与し、連休にすることもできるでしょう。あるいは、季節的な感染症が流行する時期を避け、外来患者が比較的少ない時期に付与することもできます。
個別に付与する方法としては、従業員本人やその家族の記念日を有給休暇にする、いわゆるアニバーサリー休暇を付与するのもよいでしょう。これらを組み合わせ、例えば夏季休暇3日とアニバーサリー休暇2日で合計5日付与することもできます。
どのような方法が適しているか、ご検討ください。
<まとめ>
有給休暇の目的は働く人の心身のリフレッシュですが、周りへの気兼ねゆえに取得をためらう従業員も多く、取得率は全国的に低調です。計画付与はこの状況を改善するためのものです。
院長としては、この制度を導入するだけでなく、日頃のコミュニケーションによる休暇を取得しやすい環境づくりも大切です。
このような問題は、是非一度、プロである社会保険労務士にお気軽にお問い合わせください。
柴垣 和也
社会保険労務士法人クラシコ 代表
社会保険労務士