手取りは減る一方なのに、負担は加速度的に増加
企業全体の99.7%を占める日本の中小企業の生産性は、大企業の3割程度にとどまっている──日本の生産性は主要7ヵ国中最も低く、そして中でも中小企業の低生産性が日本経済の足かせとなっています。
なお、ここまでのいずれのデータも、人口減少前にトレンドが決定しているものばかりです。少子高齢化により労働力はこの先、急速に低下する見通しです。今、中小企業にテコ入れしなければ「地方の再生」といった目標も実現はさらに難しくなります。
今後、日本は世界でも群を抜いた人口減少国となります。世界全体の人口は増え続ける中、日本は2050年には1億人を切るペースで人口が減少すると予測されています。成熟した先進国はこれからいずれも同じ道を辿るでしょうが、かつてこれほど急激な少子高齢化を経験する国は、歴史上もありませんでした。
このことから、日本は人口減少における課題先進国と言われています。これは世界からも注目されているほどの本当に危機的な状況なのですが、なぜか中小企業の経営者はそこに対する備えを全くしようとしていません。高齢化、人口減少、そして労働力不足は、これからの日本の中小企業経営の経営環境に、以下の大きな影響を与えることでしょう。
②労働人口の減少による人手不足
③少子高齢化の急速進展による社会保障費の負担増加
④財政悪化による大増税
⑤年金の支給開始年齢引上げ、支給額の減少
⑥慢性的な円安
⑦自給率の減少、慢性的なインフレ
⑧出生率の低下
③についてはすでに高い負担率となっており、むしろ税金よりも大きい負担感が感じられ始めています。2050年までには、さらに社会保障費の負担が増加することによって手取りが5割未満になるとも言われています。
④については消費税の将来的な増税は既定路線ですし、⑤の年金積立額は現時点ですでに不足しており、今後は加速していくことでしょう。すでに厚労省では年金の支給開始年齢の引上げや年金の削減案も提唱されているのです。
このような中で将来への不安から出生率が上がることに期待はできません。人口減少のペースが速まることはあっても鈍化することはなさそうです。
人口=国力です。人口減は日本の国力の相対的な低下につながることから、対外為替は徐々に円安基調になっていくと見込まれる一方、世界の周りの国は人口が増えるわけですから、日本の購買力の低下にかかわらずインフレは進んでいくことでしょう。
手取りは減る一方なのに、負担は加速度的に増え続けていく。これが日本人や日本の企業を待ち受ける未来の姿です。
残された成長資源は家計に1800兆円、企業に1200兆円、あわせて3000兆円と潤沢に積み上げられた金融資産と、世界でも最も優秀とされている「働く人」つまり人的資産だけです。これらを企業という組織単位で束ねることができ、戦略的に活用できれば日本は成長カーブを描き出すでしょうし、逆に活用できないままでは国としての地盤沈下はいよいよ歯止めがかからなくなります。
このように考えると、中小企業が存続できるかできないかという次元ではなく、日本中の中小企業が活かしきれていないあらゆる資産を活用するという経営革新を起こせるかどうか、に我が国の将来が懸かっています。
三反田 純一郎
税理士
宅地建物取引士
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