地政学リスクが高まるが、景気拡大の見通しは変わらず
金融引き締めの織り込みが急速に進み、地政学リスクも高まるなか、幅広い資産市場が調整しています。しかし、以下にみるように、利上げの織り込みについては、いったんはこのあたりで止まる可能性も考えられます。
地政学リスクについては、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも声明文のなかで言及されるとみられます。そうしたなかで、資産市場は次第に落ち着きを取り戻すとみられます。
速くなったり遅くなったり、デコボコした道のりでしょうが、おそらく変わらないことは2つあります。①ひとつは、景気が拡大をしていくこと、②もうひとつは、引き締めが進んでいくことです。景気拡大のなかでのステージの変化に備え、「分散投資を進めること」がいまできることでしょう。
利上げ織り込みゆえに長短金利が逆転
現在の金融市場による利上げの織り込みは、かなりアグレッシブに思えます。
実際、[図表2]に示すとおり、1年先や2年先の長短金利は、先週「逆転」しています。前回の利上げ局面でも、これら2つの長短金利は(フォワードの時点が1年間、異なるものの)ほぼ同時に逆転しており、その後、3年足らずのうちに景気後退が訪れています。
このフォワード長短金利の逆転は、米連邦準備制度理事会(FRB)にとってみると、その後に来るはずの「スポットの長短金利逆転」や「その後の自己実現的な景気後退」を避けるためには、「現在、金融市場が織り込んでいる以上の利上げは必要ない(かもしれない)」ことを示唆しています。
「利上げ織り込み」がインフレ期待を落ち着かせている
あわせて[図表3]のとおり、長期の予想インフレ率は、(それと連動性の高い)原油高にもかかわらず、急速な利上げ織り込みのために落ち着いています。これも、「現在、金融市場が織り込んでいる以上の利上げは必要ない(かもしれない)」ことを示唆しています。
ここで「かもしれない」と書いた理由は、1970年代のようにインフレが止まらず、「景気後退をすぐに招いてでもインフレ期待を抑制する必要がある状況」が必ずしも排除できないためです。
しかし、そうした「インフレが止まらない状況」が今後明らかになるとしても、それは例えば、(「インフレ率が鈍化する」と予想されている)今年の終わり頃から来年にかけてでしょうし、現時点ではそこまでの予想は説得力のある根拠を持たないでしょう。
今から3年くらい先の景気後退の織り込みをみた現在、FRBの今後のコミュニケーションを考えると、利上げの織り込みはいったんこのあたりで、止まるように思えます。