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国家資格を取っていても、一生安泰ではない
筆者は毎年、人材採用のための説明会などで、鍼灸や整骨の専門学校を巡っています。多くの施術家の卵たちと話す機会があるのですが、「資格さえ取れば、なんとかなるだろう」という声をよく聞きます。
また、近年は新入社員のご両親に向けても説明会を開いているのですが、そこでもやはり「手に職さえつければ、とにかく食べられる」と信じている親たちがたくさんいます。
筆者はそうした若者や親に会うたびに、「今の鍼灸・整骨業界は、そんなに甘くはありません。資格の上に胡坐をかいているようなら、必ず後悔することになります」と、はっきり言うようにしています。
保険適用範囲の縮小=「独立すれば儲かる」時代の終焉
確かに以前なら、国家資格を取った時点ですでに勝ち組でした。身一つが商売道具で経費もかからず利益率の高い事業であり、しかも保険制度が使えるということで、独立すれば確実に儲かったのです。
しかし、そんな黄金時代はとうの昔に過ぎ去りました。業界の流れを最も大きく変えたのは、厚生労働省による保険適用の範囲の縮小です。
たび重なる審査の厳格化の結果、整骨院に対し健康保険から支払いが行われたことを表す「療養費」は、2011年をピークに減少し続けてきました。
その背景には、一時期に架空請求や水増し請求といった不正請求が横行し、対策として厚生労働省が保険の適応条件を厳しくしてきたという事情があり、ある意味では自業自得といえます。
なお現在、国は少子高齢化により増え続ける医療費をなんとか抑えようと、在宅介護の推進などさまざまな政策を打ち出しています。その流れからいっても、保険適応の範囲は今後、さらに縮小していくと考えるのが自然です。
「鍼灸・整骨業界」で成功を望むのであれば…
患者の負担は増え、今までのように気軽には整骨院に足を運べなくなります。結果として、保険が適応されるメニューにばかり力を入れてきた「保険診療頼み」の整骨院は、生き残りが極めて難しくなります。
なんとか踏ん張るにはとにかく量をこなさねばならず、実際に休日返上で働き続けているような整骨院を、筆者はいくつも知っています。この現実を施術家の側から見ると、いくら資格があるといっても、保険診療メニューのオーソドックスな施術しかできないようであれば、活躍の場はほとんどなく、出世や昇給とは無縁で生きていくしかありません。
もし成功を望むなら、資格取得後にも最新の技術や知識を学び続け、さまざまな施術の経験を積み、患者を治す圧倒的な技術力や、流行りのメニューを売り込める解説力などを磨いていく必要があります。
現在において資格の取得は「ただ業界の入り口に立ったに過ぎない」といえるのです。
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