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百貨店が消えた街…山形県酒田市/埼玉県春日部市
今回の売却は、直ちに店舗の閉鎖というわけではありませんが、業界の状況を顧みると、明るい未来を見据えることはできないでしょう。
昭和の時代には、人々の憧れの場であった百貨店。人々のライフスタイルの変化に対応できず、凋落の一途をたどっていますが、特に地方や郊外では「街のシンボル」というケースが多く、百貨店の閉店は一大事です。
たとえば、山形県酒田市の中心地にあった百貨店『マリーン5清水屋』。2020年7月15日に閉店し、山形県は全国で初めて「百貨店空白県」になりました(その後『そごう徳島店』が閉店し、徳島県も百貨店空白県に)。郊外型店舗やショッピングモールの開業、地域経済の低迷などを受けて、10年以上前から閉店が噂されていました。百貨店の閉店により、いよいよ集客の中心は、1.5㎞ほど離れたJR酒田駅周辺へと移るだろうといわれています。
東京近郊では、たとえば春日部市*。2016年2月『西武春日部店』が閉店し、同市から百貨店が消えました。前身となる『ロビンソン百貨店春日部店』が誕生したのは1985年のこと。街のシンボルとして親しまれるも、春日部市の人口は2000年にピークを迎え減少期に入り、売上も徐々に下降。屋号を「西武」に変更した2013年、『イオンモール春日部』がオープンすると売上は急減し、その2年後に閉店が発表されました。存続を訴える署名運動などが行われ、百貨店跡地には高級家具販売店『匠大塚』が本店として入ることが決まり、地域の人は胸をなでおろします。
*『ララガーデン春日部店』にサテライト店『三越春日部』あり
地方と東京の郊外。状況は異なりますが、視点を変えて、両市の平均公示地価の推移に注目してみます。春日部市は東京の地価高騰に引っ張られるように、コロナ禍前は前年比プラスを記録していましたが、それ以外の時期は酒田市同様、前年比マイナスを記録しています。街として下降線にあるのと連動するように、地域の百貨店も凋落していった様がみえてきます。
【山形県酒田市/埼玉県春日部市 平均地価の推移】
2002年:▲1.33%/▲7.27%
2003年:▲2.72%/▲5.74%
2004年:▲4.20%/▲4.83%
2005年:▲5.24%/▲3.96%
2006年:▲6.61%/▲1.85%
2007年:▲5.87%/1.26%
2008年:▲5.27%/2.44%
2009年:▲5.29%/▲3.82%
2010年:▲5.82%/▲4.32%
2011年:▲5.29%/▲2.84%
2012年:▲4.78%/▲2.31%
2013年:▲3.96%/▲1.30%
2014年:▲2.25%/▲0.19%
2015年:▲1.62%/0.02%
2016年:▲1.17%/0.01%
2017年:▲0.58%/0.13%
2018年:▲0.42%/0.12%
2019年:▲0.19%/0.14%
2020年:▲0.06%/0.31%
2021年:▲0.19%/▲0.44%
※数値左:山形県酒田市、数値右:埼玉県春日部市の平均公示地価の前年比
地域の衰退が先か、それとも百貨店に元気がないから地域が衰退するのか……。どちらが先とはいえず、恐らく、相互関係にあると考えらえますが、どちらにせよ、百貨店業界にとっては厳しい局面が続きます。
総務省『令和2年国勢調査』によると全国1,719市町村のうち、82.5%にあたる1,419市町村で人口が減少しました。人口減少期にある日本では、その数がさらに増えていくものと考えられます。
さらに、現在百貨店が1店舗の都道府県は、福島県(うすい百貨店)、茨城県(京成百貨店)、山梨県(岡島百貨店)、新潟県(新潟伊勢丹)、富山県(大和富山店)、福井県(西武福井店)、岐阜県(岐阜タカシマヤ)、滋賀県(近鉄百貨店草津店)、和歌山県(近鉄百貨店和歌山店)、島根(一畑百貨店)、香川県(高松三越)、高知県(高知大丸)、佐賀県(佐賀玉屋)、熊本県(鶴屋百貨店)、宮崎県(宮崎山形屋)、鹿児島県(山形屋)、沖縄県(デパートリウボウ)と、17にものぼります。
かつて、賑わいの中心にあった百貨店。「百貨店が消える街」はさらに増えていきそうです。
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