今回は、前回ご紹介した自分のビルを客観的に見るための「物件評価書」のうち、「立地」「外観」の2項目について見ていきます。

交通の利便性だけが「立地」の条件ではない

都心ではたいていのオフィスビルが駅から徒歩5分内外にあります。ですから、オーナーが思っているほど、駅からの距離は競争力のある条件とはなり得ません。駅の隣や真正面にある、駅に直結しているなど、非常に近いというのであれば別ですが、駅から徒歩5分以内なら、それ自体は一般的な条件に過ぎません。

 

自分のビルは立地がよいと、それだけで競争力があると思っているオーナーはその時点で大きな勘違いをしているわけです。

 

また、逆に駅から遠いから、それだけで負けていると思うのも間違いです。たとえば、当社(サブリース)は20年ほど前に東京都中央区明石町の、最寄り駅(東京メトロ日比谷線築地駅)から徒歩約8分のビルに入居していました。

 

移転の際には同時に銀座のビルも検討していましたが、こちらは銀座駅まで歩いて3~4分、東京メトロ日比谷線東銀座駅へも約3分で、足回りの利便性でいえばはるかに便利なビルでした。しかもどちらも新築で、広さも同じくらい。

 

でも、私は明石町のビルを選びました。それは次のような条件を比較した上での判断でした。

 

銀座のビルは2階に飲食店があり、上階がオフィス。地下にはサウナもありました。便利といえば便利ですが、どこか猥雑な感じがするビルでした。それに比べて入居していた明石町のビルには地下階がなく、オフィスばかりでした。事務所内もエントランスも広くて明るく、気持ちがいい。

 

そこで重要となってくるのは、新卒の学生が訪ねてきたらどちらの会社に入社したいと思うか、銀行の担当者だったらどちらの会社が信用できると思うか、初めてのお客様がどちらの会社と取引しようと思うかです。賃料は銀座のビルと同じでしたが、そのビルには入居する価値が多くある、私はそう判断したのです。

 

つまり、オフィス選びにおいては立地の利便性が大きな要素と考えている人が多いのですが、実際にはその他の要素も含め、総合的に判断されるというわけです。その観点で立地といった場合には、駅からの所要時間以外にもチェックしたいポイントがあります。

 

まず、駅からビルまでの間がどんな場所かという点。途中にごみごみした路地のような場所や風俗店、消費者金融など、あまり芳しくないイメージの店舗が密集している場所があるといった立地は大きなマイナスです。テナントは自分のビジネスに有利になる、よい印象を持ってもらえるビルを探しているわけですから、来客や求職者が悪い印象を持ちかねない場所は選びたがりません。防犯面が気になるような場所ではなおさらです。

 

同様に、建物の周囲に飲食店などが入った雑居ビルや古い木造住宅が密集している、墓地が丸見えになっているというような立地もマイナス。見た目が悪い街は敬遠されます。逆に公園がある、並木の緑が見える、眺望がよいなどの場合には、来客、求職者によいイメージを与えると喜ばれることがあります。

 

つまり、ビルはそのビル1棟だけで完結しているわけではなく、周囲の環境、雰囲気も含めて評価されているのです。当然、周辺の環境が悪いからテナントが決まらないというビルもあります。その場合、オーナーだけの力では周辺を変えることはできません。

 

でも、だからといってそのビルがどうしようもない物件というわけではありません。努力しても変わらないマイナスがあることを認めなければ、自分のビルを客観的に見ることはできませんし、マイナスがあってもそれを上回るプラスを付加すれば、総合点で競合物件に勝つこともあり得ます。

まずは現状を認めることが大事

建物周辺では道路付けの問題もあります。これはテナントの業種や道路の幅、交通量などによっても異なります。一般には幹線道路に近い立地をよしとする企業のほうが、静かな立地がよいという企業よりもやや多いというところでしょうか。

 

営業で車を使う会社であれば、主要幹線道路や高速道路の出入り口に近い、一方通行の少ない場所を好みますし、社内での作業が主という企業であれば多少奥まっていても静かな環境を好むというわけです。

 

また、道路と最寄り駅、オフィスの位置関係も大事です。駅から数車線もあるような広い道路を横断しなくてはいけない立地は、駅から近くても面倒と敬遠されることもあり、幹線道路に近い=便利というわけではありません。通りによって雰囲気、交通量は異なりますから、そのあたりも客観的に考える必要があります。

 

ちなみに首都圏でニーズの高いエリアはまず何といっても千代田区、港区、中央区の都心3区。地方では景況によってそもそも入居を希望する企業の数そのものが激減、いくら募集をしてもダメという地域がありますが、都心3区であればその心配はありません。釣りに例えると、魚影の濃い薄いはあるものの、常に魚はいるエリアです。

 

続いてニーズが高いのは順に品川区(特に大崎・品川)、渋谷区、新宿区、池袋周辺。これらに続くのは台東区、文京区ですが、このエリアでは魚がいなくなる時期もあり得ます。

 

沿線別に見ると人気が高いのは歴史の古い沿線です。鉄道の沿線は昔からオフィスが集まっていて、ニーズの高い場所から順に敷かれてきたわけですから、これは当然といえば当然です。新しく郊外に開発された街は暮らしや通勤に便利で住むにはよいとしてもオフィスには向きません。オフィス向けには古くて、すでに仕上がっている街がよいのです。

 

地下鉄でいえば銀座線、日比谷線、丸ノ内線に都営浅草線の順。これらの路線は狭い地域に集中しているので、複数路線が使えることもしばしばです。パンフレットには、乗降客数の多い駅から順に書くのがポイントです。また、これらの路線は駅も地表から浅いところにあって、乗り降りが便利で、こうした点も人気の理由になっています。

 

もうひとつの人気沿線は当然ですが、首都圏の大動脈、山手線で、これらの沿線であれば魚がいなくなることはあまり考えられないでしょう。これに対して立川、千葉などといった独立した商圏となっている街では、魚自体が少ないので、不況の時期には魚がいなくなってしまいます。もし、これからオフィスビルを建てようとするなら、こうしたエリアは避けたほうが無難でしょう。

 

魚影の濃い地域にビルがあるにもかかわらず、テナントが入らないのを、景況感のせいにしてしまっているオーナーは、いうまでもなく、ビル経営について考え直す余地は大いにあるということです。

親しみやすく、まじめな印象の「外観」が良好

所要時間のように数字で明確に表される条件は比較しやすいものですが、外観のような、人によって好みが異なる条件の比較は、事前に他のビルを数多く見ていたとしても難しいものです。ですから、まずは自分がオフィスを探している会社経営者だとして、このビルを借りたいと思うかを考えることが大事です。

 

その視点でビルの第一印象がどのようなものかを考えてみましょう。ここで、だらしない、薄汚いなどネガティブな印象があれば、管理状態や建物の維持管理などに何か問題があります。どこを見てだらしないと感じたのかなどと、マイナスイメージの原因を考えながら見れば、外観だけからでもいろいろなことがわかってくるものです。そうしたネガティブな印象はないのに、テナントが決まらないビルがあるとしたら、全体の雰囲気に問題があるかもしれません。

 

好感を持たれるビルの条件についてはさまざまな意見があるでしょうが、私は親しみやすく、でも、バーやいかがわしい会社、反社会的な組織などが入っていない、まじめそうに見える雰囲気がよいと思っています。

 

大規模で、ひとつの街といえるようなビルであれば飲食店も必要でしょうが、中小規模のオフィスビルであれば不要。当社で手がけているビルは最大1万平方メートル、平均では2000平方メートル前後で、その規模のビルであれば店舗はなくても問題ありません。というよりも、店舗を入れることで建物全体の雰囲気が悪くなるリスクを考えたら、最初から店舗は不可とするほうが賢明です。

 

また、まじめそうであってもあまりに隙がなく、入るのに躊躇してしまうような堅苦しい雰囲気も、複数の企業が入ることになる中小規模のオフィスビルには向きません。後に解説しますが、理想は、誰が見てもまじめさ、清潔さを感じ、かつ高級過ぎない。服装でいえば、リクルートスーツのような雰囲気が、中小規模のオフィスビルには最適なのではないかと考えています。

 

次回は、エントランス等ほかの項目について見ていきましょう。

本連載は、2010年12月21日刊行の書籍『空室を抱える中小オフィスビルオーナーのための満室ビル経営』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

空室を抱える 中小オフィスビルオーナーのための 満室ビル経営

空室を抱える 中小オフィスビルオーナーのための 満室ビル経営

佐々木 泰樹

幻冬舎メディアコンサルティング

サブプライム問題、リーマンショックを経て、悪化した賃貸オフィスビル市場は依然厳しく、地方都市では都心以上に苦しい状況にあります。 そのような中、特に中小規模のオフィスビルは、バブル期以前に建った築20年以上のビル…

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