(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供するデイリーマーケットレポートを転載したものです。

 

■27日の日経平均株価は2万6,170.30円、前日比▲841.03円と大幅な下落となりました。これは、米国の利上げやバランスシートの縮小が前倒しとなる可能性が高まるなど米連邦準備制度理事会(FRB)がタカ派化したことを背景に米国株が調整色を強めたことや、新型コロナウイルスのオミクロン型の急速な感染拡大によって経済活動が再度委縮するとの懸念などが重なったことが背景と思われます。

 

■そこで今回は、日本株式市場を取り巻くマクロ・金融環境、企業の収益見通し、海外投資家の動向などを整理したうえで、今後の日本株式市場の展望をまとめたいと思います。

 

 

日経平均株価とNYダウ

 

世界経済は緩やかな成長を持続

<22年は日本の成長率が加速>

■世界経済は、実質GDP成長率が22年は前年比+4.4%、23年は同+3.7%と、堅調な成長が続くと見ています。22年の1-3月の景気はオミクロン型の感染増加の影響を避けられませんが、年央にかけて部品供給やエネルギー需給等の供給制約は緩和すると思われ、世界景気は若干加速する見通しです。22年後半は財政刺激策がピークアウトするものの、堅調な民間需要と低水準を維持すると見られる実質金利のサポートによって、緩やかな成長が持続すると予想します。

 

■消費者物価は21年末にかけて米国を中心に大きく上昇しました。今後は供給制約の緩和、財政刺激効果の後退、などから23年にかけてスローダウンすると見ています。

 

■こうした中、22年の日本は先進国の中で成長率が加速する数少ない国になると予想されます。物価水準も1%台に達する見通しです。

 

主要国・地域の実質GDP成長率と消費者物価

日本株式市場を点検する

<業績見通しと主なバリュエーション>

■日本企業の21年10-12月期の決算発表が始まりました。2月中旬が山場となります。10-12月期は新型コロナの新規感染が沈静化していたことや世界の景況感が落ち着いていたことから総じて好調となる見通しです。ただ、22年1-3月期は内外の環境が大きく変化していることから業績の伸び悩みが予想されるため、今後は22年、23年の業績見通しへのヒントを探る展開となりそうです。ちなみに、現時点での業績見通し(予想EPS)はTOPIXベースで22年は前年比+13.9%と昨年に続き2年連続の二桁増益で、先進国、米国(S&P500)を上回る増益が期待されています。

 

■足元の予想株価収益率は1月27日現在14.8倍と2020年4月以来の水準まで低下しています。2012年以降の平均値は16.6倍です。さらに、-1標準偏差で試算した14.4倍が一応の下値の目途となります。足元のバリュエーションは2012年からの水準でみるとほぼ割安圏にあると言えます。

 

■一方、株価純資産倍率は1.74倍と平均値の1.64倍を上回りしっかりしています。配当利回りは2.02%と2020年6月以来の2%台乗せで、平均値の1.85%を上回っています。

 

先進国、日米予想EPSの成長率

 

日経平均株価のバリュエーション

 

<改善傾向にあるROEとROA>

■また、企業が株主資本をいかに有効に活用して利益を生み出しているかを表す指標である株主資本利益率(ROE)をみると、2021年は大きく改善しました。2021年9月時点のROE(TOPIX、除く金融ベース)は9.42%です。ROEの回復は総資産利益率(ROA)の改善が主因であると言えます。昨年後半以降、日本企業は資本を効率的に活用して収益を上げ始めている構図が浮かび上がります。こうした傾向は2022年以降も継続すると期待されています。財務レバレッジ(総資産÷株主資本)は2.5倍前後で安定して推移しています。

 

ROEとROA

 

<徐々に縮小方向に向かう日本株のアンダーウエイト>

■日本株式市場は、海外投資家の影響を受けやすい市場です。株価が上昇する場面では結果として海外投資家が大幅に買い越していることが多い点からも確認できます。その海外投資家をグローバルなアクティブファンドマネージャーの資産配分という観点で見ると、日本株は10年以上にわたってアンダーウエイトとなっています。

 

■しかし、2019年以降、徐々にですが再びアンダーウエイトが縮小に向かっています。この間、世界の株式市場は米国株式を中心に大きく上昇し、時価総額が拡大する中、世界株式市場における日本株のウエイトは低下傾向にありました。そうした中で、近年、グローバルなアクティブファンドマネージャーは日本株のウエイトの修正を進めていると見ることができます。2003年以降見られたようにオーバーウエイトへの転換と株価上昇といった関係の再現は難しいとしても、日本株の下支え効果は期待できそうです。年後半に向けてグローバルなアクティブファンドマネージャーが日本株を見直すチャンスはあると考えます。

 

グローバルエクイティファンドに占める日本株式のウエイト

緩やかに改善する見通し

■日本株式市場は、足元では調整が深まっています。ただ、今回確認したように、①22年の日本経済は先進国で唯一成長率が拡大する、②22年の日本の企業業績は米国を上回る伸びが期待できる、③株価収益率は2012年以降で久々に割安ゾーンに入った、④日本企業の収益力はコロナ禍でも着実に改善している、⑤グローバルなアクティブファンドマネージャーが日本株を見直しつつある、といった好材料が揃っています。後は米国株式市場が安定するか、です。

 

■米国株式市場の現局面での下落は、利益予想が下がっていないこと、足元の決算内容が概ね良好であることから、バリュエーション調整が主因と考えられます。FRBのスタンスに見通しがつき、物価上昇率の減速が始まると見られる春ごろから米国株式市場は反発する可能性があります。

 

 

■米国株式市場の回復にも支えられ、日本株式市場も春ごろをボトムに緩やかに改善する見通しです。EPSの推計を基にTOPIXを予想すると、年後半の回復が見えてきます。

 

EPSの推計を基にしたTOPIXの予想バンド

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日本株式市場の展望』を参照)。

 

(2022年1月31日)

 

関連マーケットレポート

2022年1月27日 FRBはFOMCで3月利上げを強く示唆

2022年1月26日 IMFは世界経済見通しを+4.4%に下方修正

 

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