※画像はイメージです/PIXTA

税務署は、無申告の税務調査には多くの時間を費やします。申告した人の情報は申告書から収集できますが、無申告者の情報はゼロから集めなければならないためです。その際に税務署が活用するのが、密告者からの情報提供。特に贈与税については無申告になりやすい税目ですので、税務署も情報提供の価値を高く評価しています。みていきましょう。

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贈与税の申告漏れは税務署も把握しにくい

税金の中でも、税務署が把握しにくい税目は贈与税です。把握するのが難しい理由は、贈与は突発的に行われる行為だからです。事業経営には継続的な収入があり、毎年確定申告が必要になります。事業所得が無申告であっても、商売は公に行っているので実態を確認しやすく、税務署側も調査しやすいです。

 

一方、贈与は1度きりが多く、いつのタイミングで贈与行為が行われるか、税務署でもわかりません。また、単発贈与の場合、タイミングを見逃したら、贈与の無申告を把握することは難しいのです。ただ、贈与行為の情報があれば調べることが可能ですので、税務署は贈与に関する情報を常に求めています。

税務署の贈与税の無申告の取り締まり状況

贈与税は、無申告者が多い税目です。そのため、税務署は無申告の取り締まりを積極的に行っています。

 

贈与税の無申告の調査割合は8割を超える

税務署が贈与税の調査をする割合は、過少申告よりも無申告が圧倒的に高いのが特徴です。平成29事務年度に行った贈与税の調査では、申告漏れとなった課税価格の86%は無申告によるものでした。

 

比較対象として、所得税の実地調査件数は49,012件(平成28事務年度)ですが、無申告の調査件数は7,612件と、無申告の調査割合は15.5%しかありません。調査割合と、申告漏れ課税価格の比率は異なりますが、それでも贈与税の無申告調査割合が高いのは明確です。

 

不動産の贈与の情報は税務署にすぐに把握される

贈与税は税務署も把握するのが難しい税金ですが、不動産の贈与に関しては別です。不動産の登記情報は、誰でも確認できます。

 

不動産の贈与をする場合、不動産をもらった人はかならず法務局で所有者の名義変更手続きをします。税務署は、登記情報によって「どの物件が」「いつ」「誰に」「何が原因で名義変更した」について把握することができます。そのため、税務署は不動産の贈与税の無申告を見逃すことは少ないのです。

 

税務署は預金贈与の情報を欲している

贈与税の調査の財産別の非違(間違い・申告漏れ)件数をみると、現金・預貯金の申告漏れは72.7%と、高い水準にあります。

 

現金預貯金の非違割合は高いですが、税務署が預金贈与のすべてを把握できているというわけではありません。

 

不動産の贈与の情報は、法務局で公にされているのでいつでも確認が可能ですが、預金の情報については、公にされていません。

税務署が銀行を調査できるのは、税務調査で必要と認められる場合に限ります。そのため、情報収集だけを目的とした銀行調査はできないのです。

 

ただ、一般の方から不正について情報提供がされた場合は別です。情報提供の内容が調査するに値する内容であれば、調査対象の案件となりますので、調査権限により銀行口座を調べることができます。ですので、情報提供は、税務署に対して税務調査をする大義名分を与える役割も担っています。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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