(写真はイメージです/PIXTA)

相続があったにも関わらず、登記が故人のままになっている土地。「未登記土地」や「所有者不明土地」などといわれますが、どのような問題があるのでしょうか。相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が解説します。

なにから始めればいい?未登記土地を相続する手順とは

すでに未登記となっている土地を登記するには、どうすればよいのでしょうか?

 

たとえば、元々父の実家があった田舎に、10年以上も前に亡くなった祖父の名義のままの土地がある場合をイメージしてください。

 

父も2年前に他界し、その子である太郎さんが未登記土地の手続きをしようとしている状況を例として考えてみましょう。

 

■ステップ1.相続人を探す

 

このような土地の相続登記をするためには、まずは祖父の相続人を探さなければなりません。

 

祖父の元々の相続人であった父が亡くなり、太郎さんが相続人になっているのと同じように、他の相続人も亡くなって代が変わっている可能性があるためです。

 

たとえば、祖父には元々3名の子がいたとしましょう。そのうちの1人が、太郎さんの父です。

 

太郎さんの叔父や叔母にあたる祖父の他の子が存命であれば、その叔父や叔母が相続人となります。しかし、祖父の死亡後、叔父や叔母もすでに亡くなっていた場合、その叔父や叔母の配偶者と子が相続人になるのです。

 

被相続人の死亡よりも前に子などが亡くなっていた場合の代襲相続とは異なり、被相続人が亡くなった後で子などが亡くなった場合には、その配偶者も相続人となることに注意しましょう。

 

なぜなら、「祖父の財産を相続する権利」を持った叔父や叔母が亡くなったことで、この権利がそのまま相続財産として、その叔父や叔母の相続人へと移転したためです。なお、このような相続を、「数次相続」といいます。

 

さて、相続人の所在がわかり連絡が取れればよいのですが、所在がわからない場合には、ここに1つ目のハードルがあります。祖父の戸籍謄本や除籍謄本などを辿って、現在の住所を特定していく作業が必要となるためです。

 

たとえば、元々祖父の戸籍に入っていた叔父や叔母を探し、その叔父や叔母の戸籍の中からその子などを探し、現在の所在を探していきます。

 

この作業は慣れていないと非常に手間がかかるため、難航してしまうケースも少なくありません。自分で探すことが難しい場合には、弁護士などの専門家へ依頼することも検討してください。

 

■ステップ2.遺産分割協議をする

 

祖父の相続人が判明したら、相続人全員と連絡を取り、その土地について遺産分協議を行います。

 

たとえば、その土地を太郎さんが取得しようとしているのであれば、太郎さんが取得することについて同意をもらう形です。

 

これが、2つ目のハードルとなります。なぜなら、太郎さんが取得することに同意をせず、相続分に当たる金銭を要求される可能性や、面倒だからといって連絡を無視し続ける人などがいる可能性もあるためです。

 

無理な要求をされるなどして話し合いが難航してしまった場合には、弁護士へ相談してください。

 

無事に話し合いがまとまったら、話し合いの結果を記した遺産分割協議書を作成し、全員に実印での押印をもらいます。相続登記を申請するのに必要となるため、併せて全員の印鑑証明書をもらいましょう。

 

■ステップ3.登記をする

 

遺産分割協議がまとまり無事に遺産分割協議書の作成も完了したら、必要書類を揃えて相続登記をします。これでようやく、未登記土地の相続手続きが完了します。

百害あって一利なし!未登記のまま放置するデメリット

土地を未登記のままにしておく場合、どのような問題があるのでしょうか? ここでは、土地を未登記のまま放置するデメリットについてお伝えします。

 

■売却などができない

 

故人名義の土地は、そのままでは売却することや賃貸すること、担保に入れることはできません。そのため、仮に現在すぐに売却などをする予定がなかったとしても、相続登記をしておかなければ、将来いざ売却しようとした際に大変な手間がかかってしまう可能性があるのです。

 

故人名義のままの土地は、相続登記をしなければ権利を動かすことができない旨を知っておいてください。

 

■第三者に権利が主張できない

 

第三者に対して権利が主張できない点も、相続登記をしないデメリットの一つです。

 

たとえば、遺産分割協議でその土地を自分が取得することに決まっていたにも関わらず、登記をしないままとしているうちに、相続人の一人がその人の相続分だけを登記して、その分を第三者に売却してしまうかもしれません。

 

この場合、登記をしていなければ第三者に権利を主張することは困難となります。土地の名義変更を放置すると、このようなトラブルが生じる可能性があります。

 

■年月の経過によって権利関係が複雑になる

 

長年名義変更をしないままで、その後いざ相続登記をしようとした際には、権利関係が複雑になってしまう可能性がある点も、大きなデメリットの一つです。

 

前述の例でも解説した通り、年月が経過すると相続人の中にも亡くなってしまう人が生じ、代替わりが起こります。そうなると、縁の遠い人と話し合いをしなければならないどころか、まず所在を調べるだけでも大変な思いをしてしまう可能性があります。

 

土地の相続登記は放置すればするほど問題が複雑になり、いざ解消しようとした際の費用や手間がかさんでしまうのです。放置することで問題が解決するケースは、ほとんどないといっていいでしょう。

 

■固定資産税がかかり続ける

 

相続登記をしなかったからといって、固定資産税の納付を逃れることはできない点もデメリットです。

 

この場合、固定資産税は故人名義のままや、相続人様宛という形で課税されます。当然のことながら、この固定資産税も支払わなければ滞納扱いとなり、滞納が続けば資産に対する差し押さえがなされる可能性があります。

 

■法改正後は、違法な状態になってしまう

 

前述のとおり、法改正後は3年以内の相続登記が義務付けられるため、これを過ぎてしまうと未登記土地は違法の状態となります。罰則が課される可能性もありますので、注意しましょう。

 

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