多くの人は「マイナス思考」を持っている
テレビでは本番前に、「打ち合わせを聞いている限り、うまくいくかな?」と感じることがあります。「何か相手の言っていることがピンと来ない、結局何をやろうとしているのかな。僕に何をしてほしいのかな」と制作サイドの意図がよく伝わってこないときなどは、本番もやはりうまくいきません。「なるほどそういうことね、今日やることは」と、何かわかったときのほうがうまくいきます。
小島慶子さんのラジオ番組に、結婚したばかりの頃にゲストで呼ばれたことがありました。話題は新婚生活についてでした。「結婚おめでとうございます」の話から、「ワイフは超ポジティブな方で、でも僕はネガティブなんです。だから、ちょうどいいです」という会話をしたことを覚えています。
ちなみに、僕は妻のことをワイフと呼んでいます(笑)。
新婚当初、なぜか仕事がうまくいかず、1回ならまだしも4日も5日も「今日もダメだったな」と思って帰ることがありました。次第に、家でも暗くなりました。ワイフに相談でもないのですが、ちょっと話を聞いてほしいようなトーンで話していました。彼女はそんなにまじめに聞きません。まずは、同調しないのです。
「あ、今日の夕飯は、アンパンとあんみつ!」
アンパンとあんみつで、飲み物は味噌汁ではなく、麦茶が出てきました。落ち込んだ気分で、話を聞いてもらいたかった僕は、「うーん」という感じでした。「悪くないけれどさ」と言いたい気持ちを封印し、食べ始めるとだんだん楽しくなってきました。そして、思わず笑ってしまいました。気分を変えたいときの夕食としては最高でした。
少し目先を変えてくれる人が近くにいると、状況が打破できることも多いなと感じました。結果、僕の心はリセットされていたわけです。
ポジティブな方に、ときには手を差し伸べていただくことも必要ですが、「マイナス思考」とは、セルフチェックがしっかりとしているとも言えます。
「アンパンとあんみつ」のように、いいことだらけの思考ではありませんが、マイナス思考では本当にダメだとも思っていません。ポジティブに生きている人は、「いや考える前にもうやっちゃえよ、そんなの」と即行動を促しますが、行動を起こすときは自分が納得済みでないと動けません。
以前、元プロ野球選手の桑田真澄さんが「ノーアウト満塁から物事を考える」という話をされていました。やはり、マイナス思考の方でした。野村克也さんのご本を読んでみても、典型的なマイナス思考の方でした。
僕は周りを見ていて、世の中、ポジティブ思考の人が多いとは思っていません。みんなポジティブなほうがよさそうだという理由からそう見せているだけと思っています。多くの方は、みなさん、どこかでマイナス思考を持って生きているはずです。
ビビる大木