注目のフロンティア…サイバーとフィジカルの融合
むしろ、これから注目されるフロンティアはサイバーの世界の深掘りではなく、現実社会における課題解決に向けて、ハイテクをどう活かしていくか、であろう。今進行するIoTはモノがネットワークでつながるということであり、まさにサイバーと現実との融合そのものである。
「SoftBank World2021」でソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏が「スマボの時代がやってくる」というテーマの基調講演を行った。
AIで自ら学習し、柔軟に、臨機応変に動くロボットのことを「スマボ」、つまりスマートロボットと言っているのだが、このスマボを1億台、日本に導入すれば、労働人口にして10億人相当の国に生まれ変わる。少子超高齢社会で労働人口が減少している日本の社会課題解決に直結する、と主張する。
そして、このスマボに必要な要素技術は、スマボの目となる各種センサーと、スムーズな動作を可能にするアクチュエーターである。これらの要素技術において日本は世界最強のプレイヤーを擁している。
センサーの覇者ともいうべきキーエンス(時価総額ランキング3位)、世界一の高性能モーターを製造している日本電産(同10位)、高性能部品の村田製作所(同19位)、半導体製造装置の東京エレクトロン(同6位)、半導体ウェファーの信越化学(同8位)、光学ガラスのニッチトップ企業HOYA(同17位)などは、サイバーとフィジカルを組み合わせた「サイバー・フィジカル・インターフェイス」時代の世界トップクラスのプレイヤーである。
GAFAMが提供する土管が安くなっていくと、それによって運ばれるコンテンツが価値創造の主体になる。
ソニー(同2位)はGAFAMと一線を画しコンテンツにフォーカスした世界最大の企業ではないか。「感動を届ける」ことを企業理念としてうたい、映画・映像、音楽、ゲームなどで世界最強の基盤を整えている。任天堂(同15位)もゲームコンテンツに特化した世界的プレイヤーである。
世界最強の資本家、孫正義氏
そのほかでは、日本が擁する情報革命時代の世界最強の資本家孫正義氏のソフトバンクグループ(同7位)、アパレルの革命児柳井氏率いるファーストリテイリング(同16位)、フェイスブックが登場するよりもはるか前から出会いを仲立ちするマッチングビジネスを極め続けてきたリクルート(同4位)、環境では「空気で答えを出す会社」を標榜するダイキン工業(同12位)など、NEXT GAFAMの資格を持つビジネスモデルを確立したグローバルプレイヤーが揃っている。
高い成長が期待できる各分野で世界トップシェアを持つ日本企業は、すでに勢ぞろいしているのである。これらが正当に評価され悲観ムードが一掃されることで、異常に割安の日本の株式市場は大きく変化していくものと期待される。
武者 陵司
株式会社武者リサーチ
代表
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