大学を出てすぐに「先生」と呼ばれる特殊性
教師という仕事には、次のような特殊性があります。
①大学を出てすぐに「先生」と呼ばれ、「教室」という一国一城の主になる
ベンチャー企業はいざ知らず、見習い期間無しに初年度から第一線で活躍できる、しかも尊敬の対象となる、そんな業種・職種は、ほかには見当たりません。
②価値(教育)を提供する相手(子ども)がすでにそこにいる
価値提供の相手を汗水流して集めないと、一般の仕事は成立しません。
③べつに成功しなくても大丈夫
教員は、普通にやっていれば減給・降格・解雇はもちろん、賞与のカットすらありません。おまけに給料は毎年自動的に上がります。そんな恵まれた仕事は世の中にまずありません。
こうした仕事が良いとか悪いとか言いたいのではありません。「特殊な仕組みの中にいるのだ」という自覚が必要だということです。
子どもたちに広い世界を、多様な社会を学んでほしいわけですから、社会のゲートキーパーである教師自身が広い世界・社会を知る必要があります。知るためにはまずReflectionして、「自分たちは〝特殊〞なんだ。外の世界を知らないかもしれない」と認識することが必要です。
「教員免許の取得や維持の条件に、第一次産業・第二次産業、あるいは切った張ったの経済活動等への従事経験を加える」という法律を作るのがいちばん手っ取り早いと私は思うのですが、実現するには百年ぐらいかかりそうです。
そんな法律などあろうがなかろうが、教員自らが壁を乗り越えて、外の人々とどんどん交流すればいいだけの話です。
まず壁が低いのは、他校の教員、他校種の教員、幼保の先生、そして私教育関係者あたりかと思います。他には、経営者、一般企業の従業員、自営業者、アーティストやスポーツ選手……。
飛び出すこと、繋がることは、「主体的・対話的で深い学び」そのものです。子どもたちに教えたくなること、一緒に探究したくなることが山のように得られるはずです。是非持ち帰って、同僚や子どもたちと分かち合いましょう。
学校教育と実社会との間には、様々なギャップがあります。子どもたちの健全育成のために守るべきギャップを守りつつ、埋めるべきギャップはどんどん埋めていく、それが学校から社会への、学生から社会人へのトランジション(移行)を円滑にします。
その実現のためには、教師自身が社会に開く、社会と繋がる、社会体験を積むこと、そして「主体的・対話的で深い学び」型授業、特に探究型・活用型授業をどんどん行っていくことが重要です。
小山 英樹
株式会社対話教育所 代表取締役
一般社団法人日本教育メソッド研究機構(JEMRO) 代表理事
一般社団法人日本青少年育成協会(JYDA) 会員