相続財産の記載は「1つ1つ正確に」行う
相続財産の記載は、財産が特定できるように1つ1つ正確に記載します。たとえば、「土地は長男に、家は妻に相続させる」などのようなあいまいな書き方では、財産の特定ができません。
特に土地や建物の不動産は、登記記録の記載と一致しないと相続の登記ができないこともあるので、登記事項証明書の記載通りに記載します。未登記の場合は「固定資産税課税台帳登録証明書」の記載通りに記載します。
預貯金についても複数あるときは、金融機関の支店名・口座番号・名義など、株式であれば会社名・株数などを客観的に特定できるように記載します。
財産目録を別紙添付することもできます。この場合は、手書きではなくパソコンで作成したものでも構いません。また、登記事項証明書の写し、預貯金の通帳コピーを添付することも可能です。
■財産を受け取る相手を特定できる書き方にする
財産を護る相手が妻や子どものように簡単に特定できる場合、「遺言者の妻春子に」や「長男の太郎に」といった記載でもいいでしょう。
同姓同名の人がいる場合や、法定相続人以外の受遺者に護る場合は、受け取る相手が特定できる形で記載します。たとえば、「遺言者の姪中田冬子(昭和〇年〇月〇日生)」のように、生年月日を記したり、「内縁の妻川本夕子(本籍・埼玉県〇市〇町、住所・東京都練馬区〇町〇番〇号、昭和〇年〇月〇日生)」のように、生年月日とともに相手の本籍や住所なども記しておきます。
■封印しておくと安全に保管できる
遺言書は必ずしも封筒に入れて封印しなければならないものではありません。しかし、秘密の保持や変造、改ざんを防ぐとか、汚損などから守る意味でも封筒に入れて封印しておいたほうがいいでしょう。
封筒の表には「遺言書」「遺言書在中」などと書いておきます。裏には遺言書の作成年月日を書き、署名・押印。封印の印と、署名・押印の印は遺言書に用いた印鑑を使います。
自筆証書遺言は死後、保管者や発見者が家庭裁判所に届け出て検認の手続きをしなければなりません。
また、封印されている遺言書はかってに開封することができません。検認の際にすべてに相続人に立ち会いの機会を与えたうえでなければ開封できないことになっています。
死後、遺族が知らずに開封してしまわないように、「本遺言書は、遺言書の死後、未開封のまま家庭裁判所に提出のこと」と添え書きしておきましょう。
自筆証書遺言作成の基本まとめ
- 全文を自筆で書く
- 日付(作成年月日)、署名、押印は絶対に必要
- 加除訂正は方式にのっとって行う
- 用紙は自由、保存に耐えられるものが望ましい
- 筆記用具は自由だが、ボールペン・万年筆・サインペンなど改ざんされにくいものを使うのがいい
- 内容は具体的にわかりやすく、個条書きにする
- 必ず下書きをしてから清書する
- 財産の記載ははっきり特定できるように書く、財産目録はパソコンなどで作成したものや不動産の登記事項証明書の写し、預貯金の通帳コピーを添付してもいい
- 用紙が複数枚に及ぶときは綴じるか契印(割り印)をする
- 封印をするかしないかは自由だが、遺言書に使った印鑑で封印したほうがいい
大槻 卓也
行政書士法人ストレート 代表行政書士
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