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外国人を雇う企業が行政コストを含めて負担すべき
金銭面でも問題が大きそうです。上記のような介護や医療や教育や通訳等々のサービスには、コストがかかります。それを税金(介護保険料等々を含む、以下同様)で賄うとすれば問題です。
年金の問題もありそうです。外国人労働者が日本に来てから年金保険料を払い始めたとしても、年金保険料を納める期間が短ければ老後に十分な年金が受け取れません。そうなれば、彼らが生活保護を受給する可能性もあるでしょう。それは国民の税金から支払われることになるわけです。
諸コストを雇い主が払うべきと考える理由の第一は、そうしないと外国人の受入人数が適正数を上回ってしまうからです。外国人を雇うことによって企業の利益が1円しか増えないのに、多額の行政コストが必要なのであれば、そのケースでは日本国全体としてメリットよりコストが大きくなるわけで、外国人を受け入れるべきではありません。
外国人を雇えば企業が巨額の利益を得られ、それが行政コストよりも大きいのであれば、日本国として外国人を受け入れることが合理的といえるかもしれませんが、それをだれがどうやって判断するのか、という問題があります。簡単なのは、外国人を雇う企業が行政コストを負担するというルールにすることです。
そうすれば、外国人を雇うことで巨額の利益を得られる企業だけが外国人を雇うことになるので、日本国全体としてメリットがコストを上回ることが避けられるからです。
もうひとつ、公平の観点からの問題もあります。外国人労働者を受け入れなければ日本人労働者の給料が上がるはずなのに、外国人労働者を受け入れることによって日本人労働者の給料が上がらなくなるとすれば、彼らは「被害者」です。
その「被害者」が支払った税金等が外国人受入の諸コストを賄うために用いられ、一方で企業の利益が増えるのであれば、それは到底公平とは言えません。
大事なのは「日本人の生活水準を守る」こと
少子高齢化は、労働力不足とともに、長期的には人口減少をもたらします。そうなると、日本のGDPが減ってしまうことになるでしょう。それが問題だから外国人労働者を受け入れよう、と考える人もいるようです。
しかし、重要なのは、日本のGDPを守ることではなく、日本人の生活水準を守ることなので、人口が半分になってGDPが半分になっても構わないのです。1人当たりのGDPが維持できれば、日本人の生活水準は保てますから。
もちろん、本稿の問題意識とは別の問題として、人口が減り続ければ日本人がゼロ人になってしまう、という懸念はありますし、それを防止するために少子化対策が必要であることは間違いありませんが、それは「外国人労働者を受け入れることで日本列島に住む人の数を維持する」ということとは別の問題ですから、混同しないように気をつけたいものです。
今回は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。また、わかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。
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塚崎 公義
経済評論家
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