ポスト・パンデミック時代への移行期…注目すべきは?
それでは、2022年の展望に移って行きます。
各セクターの中で、2022年Bullishつまり強気相場と見られているのは、エネルギーと通信です。金融、不動産、小売はNeutralつまり中立です。
エネルギーセクター…2022年の注目ポイントは?
まず、エネルギーセクターを見て見ましょう。
フィリピンでは、電力価格が、大幅上昇しました。2020年の平均は1キロワット時あたり3.97ペソだったものが、2021年の夏の需要ピーク時では9.27ペソと、通常の2倍近くになりました。その後価格は下がり、現在は5ペソ前後ですが、2020年の価格からはまだ大幅に上がっているわけです。それは、端的に需要の増加と供給の減少、そして石炭、天然ガス、石油など原料価格の高騰が原因です。
さらには、大型供給源であるマランパヤ・ガス田が緊急メンテナンスのため2ヵ月ほど停止したことが価格高騰に拍車をかけました。このガス田の設備は老朽化していますので、再生可能エネルギーへのシフトが急がれます。そこで、今後の長期的な視点でのフィリピンにおけるエネルギーミックスを見て行きます。
まず現在ですが、再生可能エネルギーの比率が約20%で、化石燃料の天然ガスと石炭の割合が約80%です。ちなみに、フィリピンでは、発電に石油はほとんど使用されていません。政府の目標は、再生可能エネルギー比率を2030年に35%、2040年に50%とするというものです。
ですから、再生可能エネルギーの需要は大きく伸びるのです。
一方、化石燃料でも天然ガスについては、環境負荷が少ないということで、維持される方針ですので、2040年では、再生可能エネルギーと天然ガスが1:1といったエネルギーミックスのイメージです。ですから天然ガス発電事業会は、やはり長期的に堅調と見られています。
フィリピンの天然ガス発電最大手は、ファーストジェン(FGEN)です。FGENの事業ポートフォリオは、天然ガス82%、再生可能エネルギーの地熱18%です。
そのほかの発電大手は、大幅増益企業の中でもご紹介しましたアヤラエナジー(ACEN)、アボイティスパワー(AP), セミララマイニング(SCC)です。ACEは100%再生可能エネルギー会社です。再生可能エネルギー以外の部門は子会社ACEXに移管済みです。APは天然ガスと再生可能エネルギーが50%・50%です。そして、SCCは100%石炭火力発電になります。
通信セクターのほか、「景気敏感銘柄」に注視
2022年のテーマは、ポスト・パンデミック時代への移行です。コロナは来年なくなるわけではありませんが、私たちはCOVIDとの付き合い方を学んできて、対処法もある程度心得てきましたし、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ、ジョンソンアンドジョンソン、日本ではシオノギ製薬など世界中でワクチンや治療薬が開発されています。そう行った意味では、2022年は、コロナが生活の一部となり、コロナとともに生きる時代でしょう。
このような中、DXは、フィンテック、e-commerce、メタバーズ等々でより重要度が増して行きます。つまり高速通信の需要はますます高まりますので、通信セクターは、引き続きブルマーケットとなるでしょう。
しかし同時に、旅行や小売、エンターテインメントなどの分野も復活しつつあります。いわゆるリベンジセクターです。モールでのショッピング、レストランでの食事、カジノでのエンターテーメント、そして旅行を楽しめなかった過去2年間のストレスが、人々特に楽しむことが大好きなフィリピン人には、相当鬱積しています。この鬱積された需要が爆発すると考えられます。
機関投資家目線でいうと、いわゆるディフェンシブ銘柄からから景気敏感銘柄に資金をローテーションする動きも出てくるでしょう。景気敏感銘柄とは、経済成長に大きく依存する銘柄のことで、銀行、電力、小売、そして旅行などがそれにあたります。
2022年にはこのような動きが出てくることが予想されますが、リスクもあります。大きな需要が見込まれるため、インフレ率が上昇する可能性があります。また、フィリピン国内ではなく、地政学的には、アメリカと中国との対立軸の中で、グローバルサプライチェーンのボトルネックが発生する可能性もあります。これが、フィリピンの物価にも何らかの影響を与えることは間違いないでしょう。
また、アメリカと中国の問題だけではなく、サプライチェーンの混乱は時折発生すると思われます。
現在、世界中で、特にオミクロンの変種から新たな症例が急増しているため、時折、感染者が急増し、特定の国や地域が封鎖されることが想定されます。
しかしながら、政府はロックダウンの解除をより迅速に行うでしょう。患者が少し減れば、また通常の状態に戻し、感染者が急増すれば、今度はロックダウンを行う。でもその期間は短くなります。2020年のように、6ヵ月、8ヵ月とロックダウンするようなことはないでしょう。
ですから、マーケットも上げ下げを繰り返しながらの上昇が予想されます。