(※写真はイメージです/PIXTA)

クリニック経営を成功させるには、どうすればよいのでしょうか? 「スタッフはちょっと多めの人数で経営しましょう」「奥様への給料はきちんと払ったほうがいいですよ」…クリニック専門税理士法人を運営する鶴田幸之氏が、顧問先でこれらのアドバイスを送るのは、かつて筆者自身が失敗・苦労を経て得た「気づき」があるからです。同じ「経営者側」として、これから開業を考えている医師や、開業からまだ数年という医師、その奥様方に向けて、経営成功のポイントを解説します。

スタッフ間の対立を放置していたら、妻の態度まで変化

当時の私は、スタッフ間で生じたいがみ合いを解決することができず、放っておくことにしていました。そうすると今度は、スタッフ同士の不満は、私に対する不満に変わっていきました。スタッフの私に対する接し方がギスギスしたものになり、明らかに私に不満を持っているような態度をとるようになりました。妻は当時、1日のうちの半分くらい、事務所で仕事していましたが、私とスタッフの間で板挟みになってしまいました。今考えると当時の妻は、とても辛かっただろうと思います。そして気づくと、妻もスタッフと同様、私に不満を持っているようでした。

 

私が「〇〇について取り組もう」と前向きな提案してみても、妻が真っ先に「えーっ、嫌だ」と反対するようになったのです。「私は家族の将来のために必死に頑張っている。妻もそんな私を応援してくれるに決まっている」と勝手に信じ込んでいた私にとって、私の意見に反対する妻のことを、内心苦々しく思うようになってしまいました。

 

今思い返すと、当時の私は妻のことを、「人件費のかからない、自分にとって都合のよいスタッフ」と考えていたように思います。いくら家族であっても、何の報酬もなく、ただただ忙しく働くだけだとすれば、私に対して協力的でないことも十分に理解できます。

 

これはよくないと考え、そのころから妻にきちんと労働時間に見合った給料を払うようにしました。

 

「もらった給料の半分は家族のために使って欲しいけど、あとの半分は自分の好きにしていいよ」

 

と妻に言うとそれ以降、見違えるように急に熱心に働き始めてくれました(笑)。

 

顧問先のみなさまには、

「奥様への給料はきちんと払ったほうがいいですよ」

「そのほうが奥様も医院経営に気持ちよく協力して下さいますよ」

とアドバイスをしていますが、それは私のこんな体験から来るものです。

 

このように、当時の私には至らない部分が多々あり、妻を責めることはできません。しかし一方で、経営者の妻は本人に自覚があろうとなかろうと、スタッフから見ると経営者側の人間です。院長夫人が院長先生の考えに反対すると、「経営者側の奥さんでさえ反対しているから私たちも反対して当然だ」というお墨付きをスタッフに与えてしまいます。

 

特に私の妻のように、決して偉ぶることがなく、スタッフと同じ目線で働く人は、自分自身が経営者側の人間だという自覚が芽生えにくいように思います。院長夫人の場合でも同じことが起こり得ると思います。奥様には、ご自分の言動が周りの人たちにどう映っているかに意識を向けるようにしていただければと思います。

次ページスタッフ育成には想像以上に時間がかる

※本連載は、鶴田幸之氏の著書『成功する開業医』(中央経済社)より一部を抜粋・再編集したものです。

成功する開業医 院長夫人、あなたが期待されていること

成功する開業医 院長夫人、あなたが期待されていること

鶴田 幸之(著)
茂垣 志乙里(イラスト)

中央経済社

医院経営で一番のキーマンは院長先生ですが、二番目のキーマンは院長夫人です。 「院長夫人の医院への関わり方で医院の業績は大きく変わる」…20年間にわたり医院経営に携わってきた税理士による、“院長夫人のための”医院…

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