自治体にとって「デマが含まれているかも」は“命取り”
■デマや憶測は命の危機を招く
自治体にとってたとえ個人発信のSNSからのものであろうとなかろうと、情報の正確さは極めて重要である。
報道のための情報ならば、多少間違っていたとしても、報道機関側で事実確認をとり、とにかく現場に駆けつけることが優先される。報道の人と話していると「情報の真偽はこちらが確認するので、少しくらい不正確であっても早く情報をくれ」と言われることが少なくない。
しかし、災害対応では、そうはいかない。
自治体の担当者は、対策室で構えながら、次々に入ってくる種々の災害情報を頼りに限られた人的・物的資源の何をどこに送るべきかを判断し、指令を送る役割を持っている。担当者が自分で情報の真偽を確認している余裕はない。
不正確な情報に反応して人員を現場に送ったりしてしまえば、その対応は無意味となり、無駄な人員と時間を浪費し、被害の拡大につながってしまう危険がある。報道機関と比べると「正しさ」に求めるハードルが圧倒的に高いのである。
SNSで飛び交う情報は、災害のように深刻なときほど、不正確な目撃情報や憶測、デマなどが入り混じり混沌とする。有象無象の情報の中から正しい情報だけを確実に選び取って的確に配信できるような仕組みになっていなければならない。たった1つでも間違いや虚偽の投稿が混じってしまえば、「スペクティ」は“使えない”となってしまうのだ。
速報性では強みのあるSNSの最大の弱点は、この「デマや誤りが含まれている」という点だろう。悪意のあるなしに関わらず、SNSで発信される情報には、必ず虚偽が紛れ込んでいる。
だが、防災の世界では、虚偽情報でリソースを動かせば、文字通り「命取り」になることもある。その意味で、防災担当者は、1分1秒を争うほどに何でもいいから早く情報が欲しいというわけではないことが分かってきた。
むしろ、1分1秒の早さよりも、正しい情報を的確に精査し、そして適切なタイミングで提供して欲しい。災害対応をするために「今どこで何が起きているか」を正確に把握したい。これが防災における情報ニーズだったのである。