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「言うは易し、行うは難し」の金融引き締め

12月FOMCでは、

 

①「量的金融緩和の早期終了」と
➁「利上げ開始の前倒し」

 

が示されました。合わせて、パウエル議長はFOMC終了後の記者会見で、

 

③「バランスシートの早期縮小」

 

に言及しました。

 

言い換えると、金融引き締めについて、かなり「先に進んだ」言及がなされたわけです。

 

しかしながら、引き締めは簡単ではありません。

 

2015年12月から始まった前回の引き締め局面を思い出すと、【図表2】のとおり、①利上げ開始直前の2015年8月には(米利上げ観測からのドル高を遠因とする)『チャイナ・ショック』(=人民元の切り下げ)があり、

 

②利上げ開始直後の2016年1月にはやはり中国株安をきっかけとする『チャイナ・ショック2』(=原油価格の30ドル/バレル割れ)が起き、2度目の利上げは2016年12月まで1年間、棚上げにされました。

 

[図表2]S&P500およびFRBの政策金利
[図表2]S&P500およびFRBの政策金利

 

そして、【図表3】のとおり、①2018年10月にはパウエル議長が「中立金利到達まで長い道のりがある」と述べ、利上げを継続した結果、同年12月に株価の大幅調整を招き、②2019年9月には「ペンキが乾くのを見るほど退屈」(=金融市場には影響がない)と強調されていたバランスシート縮小中に流動性が干上がって、レポ危機が起きました。

 

[図表3]S&P500およびFRBの政策金利・保有資産、レポ金利
[図表3]S&P500およびFRBの政策金利・保有資産、レポ金利

 

時を現在に戻して、パンデミック後を思い出せば、巨額の金融緩和と(実体経済と不釣り合いな)株高が生じており、今回のFOMCで示されたような「緩和終了後ただちに利上げを開始し、しかもバランスシートの縮小も前回よりも早く始めて……」などといった、一連の金融引き締めのプロセスは「そう簡単にはいかない」と考えるほうが自然です。

FRBが示した利上げ見通しは「3回」ではなく「2回」

FOMCは、参加者の政策金利見通しを集めた、いわゆる『ドット・チャート』を示しました。各種の報道では「中央値」を見て、「2022年の利上げは3回」と表現しています。

 

しかし、筆者は「下から5番目のドットに注目すべき」と考えています。なぜなら、おそらく「下から5番目まで」に、パウエル議長、ブレイナード副議長、ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁が含まれていると考えられるためです。彼らがFOMCの政策を決定するための投票で少数派になることは考えにくいでしょう。

 

【図表4】に示すとおり、下から5番目を見ると、「2022年の利上げは2回」となっています。

 

[図表4]2021年12月FOMCの『ドット・チャート』:FOMC参加者の政策金利見通し
[図表4]2021年12月FOMCの『ドット・チャート』:FOMC参加者の政策金利見通し

 

「利上げは2022年に2回」ならば、利上げ開始は2022年6~7月頃で、2回目が同12月となります。なぜなら、2022年11月には中間選挙があるため、選挙直前の9月や11月のFOMCでは(2016年と同様に)利上げはできないとみられるためです。すなわち、量的金融緩和を2022年3月まで続け、同6~7月には利上げとなるといった具合です。

 

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