加齢黄斑変性には2つのタイプがある…萎縮型と滲出型
■日本人患者は「治療が効果を発揮するタイプ」が多い
欧米で「失明原因1位」の病気は、「加齢黄斑変性」です。近年は日本でも、中途失明原因の4位になるほど増加しています。
そのため、「加齢黄斑変性」と聞くと「失明してしまうのでは?」と思う人も多いです。しかし、加齢黄斑変性には、治療が効果を発揮するタイプがあります。
目のレンズ「水晶体」でピントを合わせた光を受け止める網膜の中央には、これまでに何度も触れた「黄斑部」があります。黄斑部には視細胞が集中しており、モノを見るための中心的な役割を果たしています。
この黄斑部が変形したり出血したりして、モノがゆがんで見えたり視界の真ん中が暗く見えたりするのが「黄斑変性」です。
加齢黄斑変性は、年齢を重ねて網膜の老廃物を処理する働きが衰えて、老廃物が黄斑部に沈着することが原因だと考えられています。そして、欧米人に多い「萎縮(いしゅく)型」と、日本人に多い「滲出(しんしゅつ)型」の2つに分類されます。
萎縮型は、黄斑部の細胞がゆっくり長い時間をかけてダメージを受けていきます。一方の滲出型は、異常な新生血管が突然、発生したり活発化したりして急激に進行します。
日本人に多い滲出型の加齢黄斑変性には、いくつかの治療法があります。新生血管をレーザーで焼いて熱凝固させたり、血管の成長を衰えさせる薬を注射したりすることで効果を発揮します。
つまり滲出型の場合、できるだけ早い段階で発見して治療することで、病気の進行を遅らせたり、ときにはストップさせたりすることが可能なのです。
■加齢黄斑変性を予防するには?食生活や生活習慣のポイント
滲出型は先にあげた治療が可能ですが、欧米人に多い萎縮型には現在のところ有効な治療法がありません。そのため、進行予防のために生活習慣を改善したり、サプリメントを服用したりすることが中心となります。
黄斑部の老化には、「活性酸素」による体内の酸化ダメージが大きくかかわっているとされます。活性酸素とは、体内にとり込んだ酸素の一部が、ほかの物質と結びつき、高い酸化力を持つ化合物質に変化したものです。
活性酸素は、タバコ、ストレス、激しい運動、多量の飲酒、食品添加物、紫外線などでも増加するといわれます。
したがって加齢黄斑変性は、加齢以外にも、こうした食生活や生活習慣も誘因であると考えられるのです。
予防のためには、まず喫煙習慣のある人はタバコをやめること。次に、活性酸素の悪影響を軽減する「抗酸化ビタミン」(βカロチン、ビタミンC、ビタミンEなど)を含む野菜を積極的に摂取することです。
黄斑部を保護する働きがあるルテインを多く含有する「ほうれん草」や「ブロッコリー」を意識して食べることがおすすめです。
米国では、ルテインなどのサプリメントを使った大規模臨床試験が進行中です。忙しくて食生活が乱れがちな人は、サプリメントを服用するのもいいでしょう。
ただし、ルテインなどのサプリメントを摂取しても、ドライアイや白内障、緑内障など、ほかの目の病気に対する効果はあまり期待できません。
「目にいい」といわれるものでも、むやみに摂取するのではなく、どの病気にどう効果的なのか、しっかりと確認してから活用するようにしましょう。
加齢黄斑変性をセルフチェック
加齢黄斑変性の初期症状には「モノがゆがんで見える」「中心部が見づらい」「視界の真ん中がモヤモヤかすむ」などがあります。しかし、片目のみに症状が起こることが多いため、両目でモノを見ている日常生活では発見が遅れることも少なくありません。
図表2の簡単な方法で、片目ずつセルフチェックしてみてください。
30cm離れたところから、片目ずつ左の図表のマス目の中央(黒い点)を見てください。メガネやコンタクトレンズはしたままでOKです。
図表2の左側のように「線がゆがむ」「中心がぼやける」「一部が欠けて見える」といった症状があれば、加齢黄斑変性の可能性があります。
梶原 一人
眼科 かじわら アイ・ケア・クリニック 院長
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