(写真はイメージです/PIXTA)

使用者が増えている「電子マネー」や「ポイントサービス」。相続の際にはどうなるのかについて、相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が解説します。

「ポイント」や「電子マネー」に関する終活

では、電子マネーや貯めたポイントについては、どのような終活を行っておくべきでしょうか? ここでは、電子マネーとポイントの終活について解説します。

 

相続ができるか確認する

 

電子マネーやポイントの終活にあたっては、まずは利用している電子マネーやポイントが相続できるかどうか確認することから始めましょう。

 

相続の可否は、ホームページや規約等で記載されていることもありますが、記載が分かりづらい場合もあるほか、言及がないことも少なくありません。

 

そのため、面倒かとは思いますが、相続できないと困るほど大きな金額やポイントが入っているものについては、発行企業に個別で電話やメールをする等して確認してください。

 

なお、電子マネーやポイントの規約は改訂されることがあります。相続ができるかどうか調べる際にインターネットで検索すると、相続の可否をまとめたサイトが出てくることもありますが、規約が改訂される前の情報でまとめられていることもあります。公式以外のサイトを参照する際は、その情報が最新なのかどうか確認しましょう。

 

利用するサービスを再検討する

 

その上で、利用するサービスやチャージする金額を検討しましょう。例えば、相続できない可能性がある電子マネーは利用しないこととしたり、利用するとしても多額のチャージはしないようにしたりする等です。

 

また、相続できないと困るほど多額のポイントが貯まっている場合には、お元気なうちに使い切ってしまうことも一つの手でしょう。

 

一覧表を作成しておく

利用している主要な電子マネーやポイントサービスは、一覧表を作っておいてください。特に、電子マネーはスマートフォン等の端末内のみで操作をするものも多く、家族がその電子マネーを使っていることさえ知らなければ、万が一の際に相続できるか問い合わせることさえできないためです。

 

そのため、きちんと相続手続を行って欲しい電子マネー等については一覧に上で、相続手続の可否や手続方法等のメモと一緒に保管しておくと良いでしょう。

電子マネーや貯めたポイントの相続手続

電子マネーや貯めたポイントの相続手続電子マネーや貯めたポイントを持っていた人が亡くなった場合、相続の手続はどうすれば良いのでしょうか? 順を追ってお伝えしていきましょう。

 

相続の対象となるか各社に問い合わせる

 

電子マネーや貯めたポイントを持っていた人が亡くなった場合には、まずはその電子マネーやポイントが相続の対象となるか、それぞれの発行母体である企業等に問い合わせましょう。

 

前述のとおり、電子マネーであっても相続できないケースもあれば、ポイントであっても家族への引継ぎや家族の利用を認めているケースもあり、一概に判断できるものではないためです。

 

その上で、相続できないとされたものについてはハサミを入れて破棄する等、相続手続が必要なものと混ざらないようにしておくと良いでしょう。

 

原則として遺産分割協議書等を作成する

 

次に、相続できるものについては、預貯金等と同様に誰が相続するのかという遺産分割協議を行い、その結果をまとめた遺産分割協議書を作成します。

 

もちろん、遺産分割協議書に、「PayPayの残高は、長男 山田太郎が相続する」等と個別で記載しても良いのですが、手続に際してはそこまでの記載は通常求められません。

 

そのため、よほど多額の残高がある場合でなければ、末尾に「その他の財産は、長男 山田太郎が相続する」というようにまとめて記載をする形で良いでしょう。

 

各社にて手続を行う

 

相続できる電子マネー等を相続する人が決まったら、各社に連絡の上、払戻し等の手続を行います。通常、遺言書がない場合に相続手続を行うには、次の書類が必要です。

 

■相続手続きに必要な書類

相続人全員が実印にて捺印をした遺産分割協議書

相続人全員の印鑑証明書

被相続人の死亡から出生までさかのぼる連続した戸籍・除籍・原戸籍謄本

被相続人の最後の住所の分かる住民票の除票・戸籍の附票

相続人全員の戸籍謄本

相続する人の住民票

相続する人の本人確認書類

 

これらの書類により、被相続人が亡くなったことや、その人がその財産を相続することにつき相続人全員が合意していること等が証明できます。

 

とはいえ、電子マネーやポイントの相続手続には、ここまで厳密な書類が求められないケースも少なくありません。例えば、モバイルSuicaでは、相続手続に必要な書類として次の2点を挙げています。

 

■モバイルSuica残高の相続に必要な書類

会員本人の死亡を証明する公的機関発行の書類(被相続人の死亡診断書や死亡届記載事項証明書等)

返金を受けようとする方の本人確認書類

 

このように、電子マネーの場合には銀行口座の解約のような厳密な書類は求めず、簡易的な書類で手続ができるケースが少なくありません。

 

どこまでの書類を求めるのかは各運営企業で異なっているのが現状なのです。そもそも電子マネーにはチャージ残高の上限が定められていることが多く、この残高がそれほど高額ではないことが一般的であるためだと考えられます。

 

また、LINE PayやPayPayは相続できる旨が規約には記載されているものの、ホームページ上には相続手続に関する記載や、手続書類についての記載さえ見当たりません。そのため、相続が起きた際は、手続方法を個別に確認する必要があります。

 

さらに、例えば楽天Edyでは、「カードの契約者が亡くなった際の手続について」とのページ内で、「カードに楽天Edyの残高がある場合、楽天Edyの残高は必ず使い切ってから、はさみで裁断し、破棄していただきますようお願いいたします。」と記載があります。

 

つまり、厳密な相続手続を求めず、相続人等がそのまま使い切ることを想定しているのです。(参照:楽天Edyホームページ)

 

このように、電子マネー等の相続についてはその手続方法が確立しているとは言えず、現段階ではかなり簡易的な対応を取っているケースが多いといえます。

 

今後、電子マネーの利用者が亡くなるケースが増えていく中で、電子マネーの相続方法についても各社で出そろい、ゆくゆくはある程度統一されていくことでしょう。

電子マネーや貯めたポイントは相続税の対象となる?

電子マネーや貯めたポイントは、相続税の対象となるのでしょうか? 結論からお伝えすれば、原則として電子マネーは相続税の対象となります。また、その評価は現金と同じです。

 

一方で、ポイントについては、相続の対象となる場合には、相続税の対象となりますが、相続の対象とはならない場合には、相続税の対象ともなりません。

 

相続税の申告をする際は、電子マネーについても漏らしてしまうことのないよう注意し、正しい申告を心掛けましょう。

まとめ

電子マネーは、原則として相続の対象となる一方で、ポイントは相続の対象とならないケースが多いと言えます。もっとも、その相続手続の方法はまちまちで、まだ方法が確立されているとは言えず、各社に問い合わせてみるのが良いでしょう。

 

電子マネーやポイントを活用している方は、いざというときに遺されたご家族が困らないよう、一覧表を作る等の対策をしておきましょう。

 

 

堅田 勇気

Authense法律事務所 弁護士

 

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本記事はAuthense遺言・遺産相続のブログ・コラムを転載したものです。

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