日本と現地それぞれに税金が発生する可能性が・・・
海外資産については、管理時もしくは処分時に、運用益や譲渡益等に対して日本と現地において種々の税金が発生する可能性があります。相続手続きをスムーズに行うためには、それらの税務処理を適切に行うことも求められます。
また、本来、被相続人が行うべきであった申告・納税手続きが行われていなかったような場合、代わりに相続人が行う必要も出てくるでしょう。そのためには、相続税以外の海外資産への課税に関する基本的な知識を備えておくことが望ましいといえるでしょう。
そこで、海外資産に関して、管理時、処分時等に具体的にどのような課税が行われるのかを詳しく解説しておきましょう。
二重課税を防ぐ「租税条約」
まず、簡単に国際的な課税ルールについて説明します。
課税ルールには、自国に住んでいる居住者に対して課税する居住地国課税と、所得が稼得された場所を基準として課税する源泉地国課税があります。
日本を含めた先進国では、自国の居住者には居住地国課税を行う一方、他国の居住者には、自国内で事業を営み、あるいは投資(預金、株式、債券、投資信託、不動産等を含みます)で所得を稼得した場合に、その所得について源泉地国課税をするのが通例です。
このため、日本人が海外の預金、株式、債券、投資信託、不動産等を保有・売却して利益が上がった場合、日本の課税(居住地国課税)と現地国の課税(源泉地国課税)の両者を検討する必要があるわけです。
ちなみに、同じ所得に対して居住地国と源泉地国で二重に課税が行われると、国際間の自由な投資が妨げられるため、所得の帰属先をあらかじめ二国間で決定することで、二重課税を防ぐ取り決めが「租税条約」です。また、不幸にして租税条約で調整しきれなかった所得に対して、居住地国で補完する仕組みに「外国税額控除」があります。