(※写真はイメージです/PIXTA)

2度の造血幹細胞移植を経て、2019年春に復職を果たした私立学校の理科教員、向井健一郎氏。本記事では白血病発症時の実体験について、費用面を中心に解説していきます。

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白血病の治療「3段階の行程」の実際

白血病の治療には、「寛解(かんかい)導入療法」と「地固め療法」と「維持療法」の3段階の行程があります。

 

「寛解導入療法」は、骨髄のなかで増えてしまった白血病細胞を5%以下まで減らすことを目的に、抗がん剤を使用して行う治療で、期間は3~4週間かかります。

 

次に「地固め療法」を行いますが、これは5%以下になった白血病細胞をさらに減らすことを目的に行う治療で、「寛解導入療法」が終了してから1週間程度の休養(体力回復など)をした後に治療を開始します。

 

この治療でも強い抗がん剤を使用するため、同じような副作用が起こります。治療期間は「寛解導入療法」と同じように3~4週間かかります。

 

最後に「維持療法」を行います。これは、白血病細胞がほとんどなくなったと判断されたときに、その状態を維持するために行う治療で、少量の抗がん剤を投与しながら体調管理を続けていくものです。

 

これは、完全寛解(白血病細胞がない状態)を維持した状態で1年から2年続けられ、完全寛解が5年間以上続けば急性リンパ性白血病は「治癒した」と考えられます。

 

また、地固め療法が終わった後で「造血幹細胞移植」を行うことがあります。これは白血病細胞の基になる造血幹細胞をほかの人のものに取り替えるもので、白血病の根本的な治療と言えるもの、いわゆる「骨髄移植」と呼ばれる治療方法です。

自分の白血球の型に合うドナーを探すのが難しい

自分の白血球の型に合うドナーを探すのが難しく、なかなか簡単ではない治療方法ですが、根本的に治すにはこれしかないとも言える治療方法なので、最終的にはこの治療法を選ぶことも考えなくてはいけません。

 

ただ、投薬治療だけで白血病がほぼ治癒したという人も存在しますし、造血幹細胞移植をするかしないかは、担当医師と患者さんの判断によります。

 

説明のとおり、基本的には抗がん剤の投与を中心とした治療になりますが、抗がん剤の副作用による苦しみは映画やドラマでも知るところだと思います。当然、入院生活に対しての不安が大きいところなので、著者は治療を開始した次の日に、私と妻でよく考えて個室の病室(一人部屋)に移ることにしたのです。

 

その理由の一つは、著者は今までに大きな病気をしたことがなく、単純に長い入院がどんなものかわからなかったので、大部屋(4人部屋)だったら同じ病室の患者さんとうまくやっていけるだろうかとか、いびきがうるさい人や性格のきつい人がいたらどうしようとか、いろいろな心配が治療の妨げになるかもしれないと思って、とりあえず最初は個室にしようと決めました。

「当座の費用を心配せずに治療を最優先にしよう」

そしてもう一つの理由は、保険に入っていたので入院費や一時金が出ることから当座の費用を心配せずに治療を最優先にしようと考えました。

 

大部屋にはシャワールームがないため、共同のシャワー室の予約を取ったうえで利用します。最初のうちは、検査や投薬の時間がなかなかつかめていないので、シャワーの予約を何時に取ったらよいかがわかりにくかったです。

 

でも、個室の病室ならシャワー室がついているので、いつでも自分の時間が空いているときにシャワーを浴びることができるので便利でした。

がんの入院費は約60万円、負担額相場は約18万だが…

自分自身の肉体的、精神的な闘いも重要ですが、ほかにも絶対に考えなければならない大切なことがあります。「お金」の問題です。そこで「がん」との闘いで大事な「治療費」について考えてみたいと思います。

 

厚生労働省の医療給付実態調査の統計によると、「がんの入院費用」はおおむね60万円くらいで自己負担額は18万円くらいです(3割自己負担の場合)。

 

ただし、「悪性リンパ腫」と「白血病」の医療費はそれらより高額になっていて、それは治療に要する期間が長くなることが原因だと思われます。特に白血病は時間がかかり、その分だけ費用も高くなります。

 

また、この統計にある金額は健康保険制度に則った治療に関する費用なので、いわゆる「先進医療」や「自由診療」などの費用は含まれていません。「先進医療」や「自由診療」と呼ばれる治療は、高度な技術や未承認の薬などを使うので健康保険制度の対象外、その治療費は全額自己負担になります。

差額ベッド代は約50万円。毎月の給料より高く…

こういった基本的な治療そのものにかかる費用のそのほかにも、いわゆる「差額ベッド」(個室の利用費用)や入院雑費(シャンプーや紙おむつなど)がかかります。実際に、著者の場合で見てみると次のようになりました。

 

金額は2015年8月の例です。

 

・健康保険制度による治療費……約20万円
 (高額医療費制度を使っての額、人により下がる場合もあり)
・先進医療や自由診療による治療費……約10万円
 (未承認の薬を使っているためです)
・差額ベッド(個室利用料)……約50万円(1日16000円×31日)
 (クリーンルーム個室なので通常より高い金額になります)

がん特約を付けていたため、3ヵ月は金銭的負担なし

私は、結婚したときから「医療保険」に加入していて、その医療保険のなかに「がん特約」を付けていました。これが良かったのです。おかげで「がんと診断された場合、200万円の一時金が支給される」ことになります。さらに、入院費用については「1日あたり1万円支給(60日まで)」が付いていました。

 

この保険から支給される額で、金銭的に負担のない状態が約3ヵ月は持ちそうでした。ほかにも手術や治療行為に対しても保険金が支払われるようなので、実際はどのくらいまで出るのか請求してみないとわからないですが、いずれにしても、入院してから3ヵ月後には、大部屋に移るか貯金を切り崩すかの判断が迫られそうでした。

 

テレビCMで「がん保険」について、タレントさんが「めちゃくちゃ大事」と言っていますが、本当に入っていて良かったと実感しました。現在の「がん保険」では、「先進医療」や「自由診療」にも対応したものがあるので検討してみたら良いと思います。その分、一時金は100万円かもしくはないものが現在は主流のようですので、そのあたりの詳細はご自身でしっかり確認してください。

 

また、入院日数ですが、白血病やリンパ腫を除くほとんどの「がん」の場合、入院日数は平均40日くらいで、20日〜60日が多いようです。だから、入院費用の限度は60日でも十分だと考えますが、私のような白血病や転移したり重症化したりする場合などを考えると、60日以降も補償されるものを選んだほうが良いかもしれません。

 

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向井 健一郎

1958年東京都生まれ。私立学校の理科教員。大学卒業後に都内の私立学校での非常勤講師を経て、1984年から昭島市の啓明学園に勤務。1998年から北海道の立命館慶祥中高に転職し、理科だけでなく情報教育やSSHなどに取り組む。2014年に京都の立命館一貫教育部に配属。翌年の夏に「白血病」を発症し、京大病院での入院治療を開始。2017年4月に立命館中高に復職するも再発。2度の造血幹細胞移植を経て、2019年春に立命館一貫教育部に復職。

 

 

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本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『ボクは、笑顔でできている~多くの人に支えられて、白血病と闘うことができました~』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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