●11月米CPIが予想通りの結果となったことで安心感が広がりS&P500指数は過去最高値を更新。
●オミクロン・ショックによるS&P500指数の最近の下落率は原油高などによる9月の下落率を下回る。
●9月以降の一連の懸念材料は消化が進行、業績見通しは良好で米国株は底堅い推移を予想。
11月米CPIが予想通りの結果となったことで安心感が広がりS&P500指数は過去最高値を更新
米労働省が12月10日に発表した11月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比で6.8%の上昇となりました。10月の6.2%から上昇ペースが一段と加速し、約39年ぶりの高水準に達しました。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIも、前年同月比4.9%の上昇となり、10月の4.6%から伸びが加速しました。コアCPIでは、中古車価格の高い伸び(同31.4%上昇)が続いています。
なお、CPIおよびコアCPIの前年同月比の伸び率は、いずれも市場予想と一致しました。そのため、今回の結果を受け、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策の正常化を一気に進めることはないとの見方が優勢となり、同日の米国株式市場では、買い安心感が広がりました。ダウ工業株30種平均、S&P500種株価指数、ナスダック総合株価指数はそろって上昇し、S&P500種株価指数は過去最高値を更新しました。
オミクロン・ショックによるS&P500指数の最近の下落率は原油高などによる9月の下落率を下回る
一般に、株価が上昇基調を維持していても、時々調整が入ることは自然な動きと考えられます。実際、S&P500種株価指数は、2020年12月31日から2021年12月10日までに25.5%上昇していますが、この間、2%から4%程度の下落は何度も発生しています(図表1)。今回の、いわゆるオミクロン・ショックによる株価の下落率も、4.1%でした(2021年11月18日から12月1日までの期間)。
なお、S&P500種株価指数は、2021年9月2日から10月4日までの約1ヵ月間で、5.2%下落しており、オミクロン・ショックよりも大きい下落率となっています。この時、市場で懸念された材料は、原油価格の上昇、米国のインフレ懸念と早期利上げ観測、中国の恒大集団問題と電力不足問題などでした。その後、S&P500種株価指数は持ち直し、2021年10月21日に過去最高値を更新しています。
9月以降の一連の懸念材料は消化が進行、業績見通しは良好で米国株は底堅い推移を予想
足元では、WTI原油先物価格と米10年国債利回りの上昇が一服し、米国の金融政策正常化のペース加速も相応に市場に織り込まれたとみられます。また、中国政府は景気配慮型の政策に舵を切り、恒大集団問題にも全面関与の方針を固め、オミクロン型へのワクチン効果も初期の検証報告が確認されるようになりました。そのため、9月以降に浮上した一連の懸念材料は、S&P500種株価指数の値動きをみる限り、消化が進んだように思われます。
今後、市場の関心は、改めて企業業績に向かうと考えられます。そこで、S&P500種株価指数について、1株あたり利益(EPS)の市場予想をみると、この先も順調な利益の伸びが見込まれています(図表2)。この点を踏まえると、オミクロン型や米金融政策、中国景気に、よほどのネガティブ・サプライズが生じない限り、S&P500種株価指数など米国株は底堅い展開が予想されます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『最近の米国株の動きについて』を参照)。
(2021年12月13日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト