偏差値至上主義ではなく、子どもを第一に考える
■「ぐんぐん根を張っていける子」に共通する家庭とは
安浪 私は家庭教師としていろんなお子さんと接していますが、親が目先の1点2点ではなく、本当の力を身につけてほしい、というスタンスのおうちは指導しやすいですよ。そういう子は本当に伸びていくので。
おおた ああ、それこそ小学校では伸びなかったとしても、中学校に入ってから伸びていく?
安浪 伸びますね。「中高6年間で学力の土台を広げられる」と書かれていましたが、そういう子にはそういう指導ができるんです。模試ですぐに点がとれるわけじゃないけれど、本人が根を張っているのがわかる。入試の時点で結果がどうこうではなく、受かる子もいれば落ちる子もいるけれど、その後がぜんぜんちがう。
おおた そういう家庭は受験に対するスタンスもちがうのでしょうか?
安浪 はい、そういう家庭は、「何が何でもこの学校!」という偏差値至上主義ではなく、子どもを第一に考えていますね。もちろん合格できればとは思っているけれど、「最終的に収まるところに収まればいい」と大きくかまえています。そう思えていない家は、詰め込む!
おおた 本当にそうだと思います。
安浪 ポテンシャルが高くて能力があるなという子は、授業をしていると、返してくる考え方とか発言の内容がちがうんです。でも入試問題になると、計算ミスだったり、6を8と転記ミスして×になって不合格になる。ナンセンスだけど、入試とはそういうものなんです。能力が高いことと入試で点をとることは別スキル。でも受験では、後者のスキルを磨かないと受からないよ、という話ですね。
おおた そのとおりです。ただ、ムリして詰め込んで勉強したからといって、皆が皆、伸びないというわけではないんですよね? そう言い切ってしまったら、そうしている子はかわいそうな気がするんですけど。
安浪 それは正直に言うと、残念ながらやっぱり伸びないですよね。その無味乾燥な詰め込みになってしまっているのは、やはり教える側の責任だと思います。そういう教え方をしている先生が多い。とはいえ、先生も被害者で、「ちゃんと教えたくてもできない」状態だったりする。塾ではとにかくやることが多いので、やりきれないんです。そんな塾に焚きつけられて、親も「待つ」ことができなくなっている。事実、コロナの期間、塾に焚きつけられないと、親も子もポーッとしていた家庭が一定数ありました。