※画像はイメージです/PIXTA

遺産の中に「金・純金・金地金」が……このようなとき、「相続税はかかるのか?」「かかるならどのように評価するのか?」など、さまざまな疑問がわいてくるでしょう。そこで「金・純金・金地金」の相続についてみていきましょう。

「金・純金・金地金」を使った相続対策

金の仏像で相続税対策は無意味なのか?

金の仏像や仏具を作ることで相続税の節税対策をするという方法が各方面で紹介されています。相続税の非課税財産の一つに祭祀財産があります。財産を祭祀財産である金の仏像や仏具に変えることで、相続税が節税できるという考え方ですが、無意味であるばかりかリスクが高い方法です。

 

日常から金の仏像や仏具を祭祀の対象としていれば非課税財産として認められますが、祭祀の対象としては不自然な状況である場合は、祭祀財産ではなく一般の財産とみなされることがあります。一般の財産とみなされれば、相続税の課税対象となります。

 

また、金の仏像や仏具は、加工費や美術品としての価値が加わる分、金地金に比べると価格は割高になります。しかも、貴金属として売却するときは、加工費は反映されずに金の重量分だけの価格となります。美術品として売却する場合も、価格はその時々の需給に左右されます。

 

このように、金の仏像や仏具は相続税の節税対策とならないばかりか、価格の変動リスクもあるため、純粋に祭祀の対象とするのであればよいのですが、単に相続対策という観点だけで金の仏像や仏具を作ることは、あまりおすすめできません。

 

金の延べ棒を自宅に隠しても税務署にはバレる

脱税の手口の代表例は財産を自宅に隠しておくことです。金の延べ棒は価値の割には場所を取らないため、財産隠しに有効であるようにも思われます。しかし、税務署は過去の所得や預金の記録を丹念に調べて、疑いがある場合は自宅を訪ねて財産の調査をします。このようにして、隠し財産はいずれバレてしまうのです。

 

実例をご紹介しましょう。2010年1月、国税局が長野県の会社社長宅を調査した際に、金の延べ棒210本(時価5億6,300万円相当)と現金6億7,000万円が見つかりました。財産を隠して相続税7億円あまりを脱税した疑いで、会社社長はその後逮捕、起訴され、有罪判決が下されました。

 

このように、さまざまな方法で相続税の課税を避けようとするケースは後を絶ちません。しかし、相続税の課税は法律で定められており、不正を働くと必ずペナルティーが科されます。先ほどの会社社長の事例は特に悪質であったため、逮捕、起訴に至りました。しかし、逮捕、起訴にまで至らなくても加算税が科されるので、節税したつもりが結果として税金を余計に払うことになってしまいます。

 

また金地金、金貨、純金積立の取引では、売却代金が200万円を超えるとマイナンバーの提出が必要になります。手数料を差し引く前の売却代金が200万円を超える場合には、取引業者が税務署に取引内容を記載した支払調書を届け出ることになっており、支払調書にマイナンバーを記載する必要があるためです。

 

相続した金地金を売却したときには、業者から税務署に支払調書が提出されます。仮に、相続のときに財産を隠したとしても、この売却のタイミングでバレることは十分ありえます。

 

金は固定資産税がかからない安定資産で遺産分割もしやすい

「有事の金」という言葉があるように、金は安定資産として知られています。利息を生まないものの、世界的に見ても数量が限られているので、大きく値崩れしないことが特長です。

 

金は不動産とは異なり、保有しているだけでは固定資産税やそのほかの税金はかかりません。また、換金性に優れているため、遺産分割に適しています。

 

あらかじめ金地金を小分けにして相続人の数だけ用意することもできます。ただし、一般に500g未満の金地金を購入するときは手数料がかかります。

 

自宅に金を保管するのが心配であれば、貸金庫や貴金属業者の預かりサービスが利用できます。ただし、手数料や保管料が必要になることが一般的です。

 

■家族に金の存在を伝えておく

自宅や貸金庫に金の延べ棒や金貨があれば、相続人は簡単に財産を見つけることができます。一方、貴金属業者に預けている場合や純金積み立てをしている場合は現物がないため、相続人が財産を見つけ出すことは難しくなります。

 

取引内容の通知などが郵送される場合もありますが、インターネットで取引している場合は、通知が送られてこないこともあります。相続対策では、貴金属業者に金を預けていることや純金積み立てをしていることを家族に伝えておくか、メモを残しておくことをおすすめします。

 

■金貨を生前贈与する方法も

相続対策としては、金貨を生前贈与する方法も有効です。金を贈与した場合は贈与税の課税対象になりますが、贈与される人一人あたり年間110万円以下の贈与であれば贈与税はかかりません。生前贈与の方法として、少額の贈与を長年にわたって続けることがよく知られていますが、現金の代わりに金貨を贈与すれば、将来の値上がり益も見込めます。ただし、元本が保証されていないので値下がりするリスクもあります。

 

少額贈与するのであれば200g程度の金地金でもよく、むしろ低コストである場合が多いのですが、金貨には特徴のある美しいデザインが施されており、贈る楽しみともらう楽しみがあります。また、種類によっては毎年デザインが変わるものもあるため、年ごとの贈与に向いているでしょう。

「金」を使った相続対策は慎重に

金は古くから価値のあるものとされ、富の象徴として多くの人を引きつけています。金は安定資産として価値の保存に優れていますが、少量の取引では手数料などのコストが割高になるため、一定以上の資産がある人に向いています。

 

一定以上の資産がある人なら相続税の課税対象になることが多いため、金を使った節税方法が注目を集めていますが、そのような節税方法は無意味であることがほとんどです。また、課税を免れるために財産を隠すことは違法行為です。

 

金の特徴を踏まえて相続対策をするときは、適切な方法を取らなければなりません。わからないことがあれば、貴金属業者や税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。

本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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