キャリア・ビジョンを考える
大学の卒業生たちは就職をして、今度は自らのキャリアづくりを始めます。では、キャリアとは何なのか。キャリア開発室長として、学生たちを社会に送り出してから突き当たったのは、そもそも、「キャリアとは何か」という問題でした。
キャリアの形成においては、仕事だけでなく、多様な学習や経験も必要です。そこで考えたのが、キャリアとは「仕事歴を中心とした学習歴、経験歴の総体である」という仮説でした。仕事歴、学習歴、経験歴の3つの軸から、自分のキャリアの足跡、すなわち、「キャリア自分史」を作成し、これからのキャリア目標を導き、さらに、自らの天職を探る。
これが人生鳥瞰図の「ライフデザインの構築」になります。
こうして、学生たちに自分史を書かせる、就職指導をする、キャリア形成の指導を行うという3つの段階を経て、3つの図解ができあがったころ、キャリアカウンセラーの資格制度をつくるという話が、私のところに持ち込まれました。
それまでも、キャリア開発に関する資格制度はありましたが、総じて海外からの輸入品を翻訳したものばかりでした。そこで、日本発のキャリアカウンセラーの資格制度を創設しようという動きがあらわれたのです。
結局、この試みは実現しませんでしたが、その準備の過程で、それまで学生たちや卒業生たちに向けて、自分史づくりや就職指導、キャリアづくりをめぐって考えだした3つの図解を統合させてみました。
そこには、過去から現在に至る振り返りと、未来に向けた展望の両方が入っている。まさに、人生を鳥瞰することができる。人生という長い旅路の羅針盤となるこの図を「人生鳥瞰図」と命名したのです。
久恒 啓一
多摩大学名誉教授・宮城大学名誉教