学生の就職指導から考案した「5W2H」の方程式
やがて、一期生も3年生になり、就職問題が浮上してきました。そこで、キャリア開発室を開設することになり、学生部長を務めていた私がキャリア開発室長を兼務することになりました。学生たちに、どのように志望先を選べばいいのか、指導しなければなりません。「私に合った仕事」の探し方です。
まず、仕事を行ううえで自分はどのような人材なのか、「自分像」を明確にする必要があります。
そこで、今度は、「性格」「関心」「能力」の3つの側面から「自分像」を描き出すという仮説を構築しました。
このなかで、「性格」については、当時、私が注目して研究会にも参加していた、「エニアグラム」という分析手法を採用しました。日本エニアグラム学会によれば、概略は次のように説明されています。
エニアグラムという言葉はギリシャ語で、エニアは「9」、グラムは「図」を意味します。
図の起源は古代ギリシャ、あるいは古代エジプトにまでさかのぼるともいわれています。
エニアグラムの性格論は、1960年代につくられたもので、1970年代から米国で精神医学や心理学の研究者が注目するようになり、理論を発展させてきました。いまでは、性格分析の手法として、人間学や心理学の分野で世界各国に広まっています。
日本でも、人間関係改善のために学ぶ人が増え、教育関係者、医師、心理療法士のほか、企業でも研修に導入するところが出ています。
エニアグラムは、人間の性格を9つの類型でとらえます。このような性格類型論は、似ている性格をいくつかのタイプにくくり、人の性格全体を網羅的にとらえようとします。
これには、ある人の性格の特徴の全体像を説明できるのでわかりやすく、性格をつかみやすいという利点があります。
「性格」「関心」「能力」をもとに「自分像」を導き出し、次いで、「私に合った仕事」を探し出す。この仕事探しは「5W2H」の方程式を使って行います。
まず、WHOは「自分像」です。ここが起点になります。
WHYは「価値観」。なぜ、その仕事を選ぶのか、自分の価値観が大きく影響します。
WHENは「時代」。これからどんな時代になるかを予測します。
WHATは職種。企業・組織には、さまざまな職務があります。それらは、企業・組織の経営資源、すなわち、ヒト・モノ・カネ・情報のうち、どの資源を仕事の対象にするかによって種類がわかれます。たとえば、企業の場合、ヒトが対象なら営業、モノが対象なら開発や製造、カネが対象なら経理、情報が対象なら広報・宣伝といった具合です。
WHEREは業種。いわゆる、業界です。
Hは2つあって、HOWは、仕事の内容を表します。もう1つはHOW MUCH、つまり、給与水準などを含む福利厚生の条件を意味します。
この5W2Hをもとに、「私に合った仕事」をリストアップするのです。
こうして就職指導の必要性から、人生鳥瞰図の右上の方の元になる図が誕生しました。