前回は、なぜ遺言書があるにもかかわらず「死後事務委任契約」を作成する必要があるのかを説明しました。今回は、死後事務委任契約に盛り込むべき7つの内容について見ていきます。

受任者が難しい判断を求められないようにしておく

連載第1回目で、死後事務委任契約に記載すべき内容についてざっと触れましたが、契約にあたって確認しておきたい事項を、さらに詳しく見ていきましょう。

 

受任者もしくは再受任者に親族を指定した場合、その人が難しい判断を求められずに済むように、次のことについては、自分で決めておくようにしたいものです。なお、これらは、必ずしも全てを死後事務委任契約に盛り込む必要はありません。細かいことについては別紙にして、その旨、契約に記載しておけば足ります。

喪主、形式、遺影など、できるだけ細かく指定を

①葬儀一切を誰に任せるか

 

誰に喪主を頼み、葬儀を取り仕切ってもらうのか、明確にしておくようにしましょう。「葬儀一切を○○に依頼する」の文言は必ず入れるようにします。

 

②葬儀の形式、場所、希望があれば宗教者の指定

 

近年は、葬儀のやり方もさまざまになってきています。仏式・キリスト教式・神道など、どの宗教による葬儀を行ってほしいか、特定の宗教者に頼みたいのであればその旨を明記します。できれば葬儀場(葬儀社)をどこにするかということにも、触れておくといいでしょう。

 

特定の宗教によらず、無宗教で行うこともできますが、その場合は通夜も告別式もあっという間に終わってしまい、時間がもたないため、読経等に代わるものを考えておく必要があります。

 

海や山への散骨は、自治体によっては条例で禁止されていることもあるので、確実に実行可能な地域を調べた上で場所を指定するようにします。

 

③死亡の連絡の範囲、弔辞、献杯を誰に頼みたいか

 

現役で仕事をしている場合、どこまで死亡の連絡をすればいいか家族にも判断がつきやすいですが、現役引退から時間が経てば経つほど判断しにくくなるものです。仕事・学生時代の友人・趣味の仲間など、グループ別に分けて、それぞれのグループの中心的な人の氏名と連絡先を書いておきましょう。

 

また、告別式で弔辞を読んでもらいたい人、収骨後の精進落としのときに献杯の発声をしてもらいたい人を指定しておくと、受任者(再受任者)にとっては助けになります。

 

④遺影のセレクトと、戒名について

 

遺影は亡くなった人を偲ぶためのものです。自分らしさがよく出ているもの、気に入っているものを選んでおくといいでしょう。また、戒名については、どれくらいの予算なのかを明確にしておくと、残された人が迷わずに済みます。

 

⑤墓と納骨をどうするか

 

菩提寺がある場合は、そこに入るのか入らないのか、あるいは「新たに自分の墓を建ててそこに入りたい」など、自分の希望を記しておきましょう。最近、話題を集めている樹木葬(大きな木を取り囲むようにお骨を埋葬する方式)を希望する場合は、具体的な霊園を指定するようにします。

 

⑥回忌をいつまで行うか

 

かつては、一周忌、三回忌、七回忌、十三回忌、十七回忌、二十三回忌・・・と続き、五十年祭で終わりにすることが多かったですが、最近は簡略化されており、七回忌で終えることが多いようです。

 

いつまで行うのか、そのための費用の負担は誰が負うのかを明文化しておきましょう。費用を負担する人には、その分、財産を多めに相続させるといいでしょう。

 

⑦老人ホームの入居一時金の受け取りについて

 

連載第3回で説明したように、入居一時金の受け取りをめぐっては、トラブルが起こりがちなものです。設備の整った、いい老人ホームであればあるほど、入居一時金は高額になりますから、亡くなった後の返戻金も高額になることが多いものです。

 

本人が亡くなると、入居一時金は債権となり、相続財産とは異なった性質を持ちます。相続人の誰かが独断で受け取りに行き、自分の懐に入れるということもないことではありません。あるいは、場合によっては老人ホームの側から、「相続人全員のハンコがないと返せない」と言ってくる可能性もあります。

 

そうした事態に備える意味でも、老人ホームの入居一時金の返戻金に関する文言を忘れずに入れておくようにしましょう。

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