調査でみえた「課題」…問題報告件数の増加
それでは、今年の調査でみえた注目ポイントについてみていきましょう。
2020年初めに、新規口座開設や取引数が大幅に増加しました。これらはコロナ禍に対する市場の反応や、手数料無料化などのさまざまな理由によって生じた現象です。しかし、新規層座解説や取引数の増加に伴って、問題報告件数も大きく増加することとなりました。
実際、投資家による問題報告件数はほぼ倍増しており、セルフサービス型投資家は11%、ハイブリッド型投資家は12%が何らかのトラブルを経験しました。原因になったのは「ウェブサイト」、「取引執行と処理」、「口座明細書」が挙げられます。
トラブルを経験しなかった自己決定型投資家は、総合的な信頼度とその会社への支持率が大幅に増加したところをみると、これは業界にとって大きな課題であるといえます。
ゲームストップ株騒動のロビンフッドは、新規口座開設数トップだが…
また、今年の1月~2月に米国ゲームストップ株騒動の渦中にあった、モバイルフレンドリーでなじみのあるオンライン証券会社のロビンフッドは、セルフサービス型投資家における新規口座開設数の27%を獲得し、競合他社をリードしたことが本年調査で明らかになりました。
同社の市場シェアは拡大したものの、ファクターとしてみると「顧客対応(デジタルチャネル)」や「手数料」における強みは、「信頼性」「顧客対応(対人チャネル)」「問題解決」での低評価により相殺されてしまいました。信頼構築に課題が残ります。
機能開発に力を入れるも、使いやすさに難点
利用する証券会社が「有益なガイダンスやアドバイスを提供している」と投資家が強く思う場合、総合満足度スコアがそれぞれ(セルフサービス型では1,000ポイント満点中148ポイント、ハイブリッド型では155ポイント)上昇しました。
このように顧客満足度の大幅な上昇が見られるにもかかわらず、投資家のうち、実際に証券会社が「有益なガイダンスやアドバイスを提供している」と回答した人は半数にも達しませんでした。
多くの企業が機能やツール、教育コンテンツの開発に力を入れてきましたが、多くの場合分かりやすさや使いやすさに難点があります。したがって投資家は本来享受できるはずの恩恵を受けることができていないのが現状です。
収益を上げるには「総合的な金融ニーズへの対応」
総合満足度は、投資家が「1つの証券会社で4つ以上の商品を利用している場合」に最も高くなります。この商品とは投資だけでなく、銀行取引や住宅ローンなどを含みます。
「セルフサービス型」の投資家は、1つの商品しか利用していない場合に比べて、4つ以上の商品を利用している場合総合満足度のスコアが103ポイントも高くなりました。「ハイブリッド型投資家」も同様に76ポイント高くなりました。
取引手数料無料の環境下において収益を上げるためには、顧客満足度を向上させるだけでなく、「顧客との関係を深める」ことがかつてないほど重要になっています。
デジタルエクスペリエンスの重要性が高まっている現在、企業は、投資だけでなくすべての金融ニーズを1つのインターフェースで管理できる「統合デジタルエクスペリエンス」を提供することで、クライアントに付加価値を提供することができるでしょう。
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