(※画像はイメージです/PIXTA)

難関大学や医学部への進学を目指す学生にとって、高校3年間は「受験勉強を優先させる時期」というのが一般的な考え方だろう。しかし某国立大学医学部に首席合格した医師の岩橋晶子氏は、一旦受験のレールから外れ、海外に留学することを選択した。その経験から得た医師としての姿勢とは。当時を振り返りながら語ってもらった。

見抜かれていた持病の悪化

しかし、当時の私には持病があり、その持病が悪化したために当初の予定より早めに帰国しなければならなくなった。「全然大丈夫、元気!」と健康を装っていたが、ホストマザーが医師であったため、体調が良くないのはすぐに見抜かれてしまった。

 

早めに帰ることが決まった時は本当に落胆した。中途半端に終わることが許せない性格であったこと、オーストラリアでの生活が本当に楽しいものであったこと、素敵な友達やホストファミリーに囲まれて毎日が幸せであったこと、分からないながらも日々英語圏で生活して成長して生き生きとしている自分がいたこと、その全てが一瞬で崩れ去るような、そんな思いであった。

 

悲しくて悔しくて自分の部屋に閉じこもってずっとずっと泣きじゃくっていた。

人生で一番の宝物

そんな時、ホストシスターが私の部屋に来てくれて、数日前に海沿いのレストランに行った時に一緒に拾った貝殻と手紙を持ってきてくれた。

 

「この貝殻は貝殻だけじゃないよ。約束を書いているよ。再会する約束。そしてこの貝も病気を描(えが)いている」

 

一生懸命日本語で書いてくれた文の後にはこう書かれていた。

 

「You are a beautiful person& you just need to peel away the crust of this shell we found together to see that it is beautiful too. Fighting your disease will be hard to start, just like cleaning this shell will be hard to start. But I’ve started cleaning the shell for you.

 

(あなたはこの貝殻の内側の真珠層のように素敵な人。このあいだ一緒に見つけたこの貝殻をあげるね。ただこの外側の殻を剥がせばいいんだよ。病気と闘い始めるは大変なこと。ちょうどこの貝殻を剥く時の剥き始めが大変なようにね。でも私が、あなたのために剥がし始めておいてあげたよ) 頑張ってくださいね!」

 

ただただ涙が溢れた。と同時にこんな素敵なホストシスターに出会えて、私は既にとても幸せだということを思い出させてもらった。

 

途中で帰国することになったのはとても残念で悲しかったが、この出来事がなければ、ホストシスターとも心から会話し、通じ合う仲にはなっていなかっただろう。言語の壁があっても、心は深いところで通じ合える、そう感じた出来事であった。

 

この貝殻は当時から今まで、どこに住んでいる時もずっと大切に持っていて、辛い時、悲しい時、落ち込みそうな時には、ちょっとずつ貝の殻を剥いている。間違いなく私の人生の中で一番の宝物だ。

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