海外資産の相続は、それぞれの国ならではの課税の特徴を押さえたうえで、対策を講じていく必要があります。本連載では、海外資産のスムーズな相続を実現するための「生前対策」について紹介します。

相続人には高い語学力まで求められる!?

海外資産の相続については、現地国でのプロベート(相続手続き)や税務手続き、さらにはその財産の処分及び換金において、国内資産の場合とは異なった配慮や注意が求められることになります。事前の知識がなく何ら相続対策をとっていなかったために、相続に関する一定期間内の手続きに対応しきれず、現地国での相続(財産の承継)自体をあきらめざるを得ない状況が生じるかもしれません。

 

従って、海外に資産がある場合、現地国では特に複雑で長期間を要する相続手続きや最終的な換金手続きを踏まえた事前の相続対策を行うことが重要です。

 

海外において相続発生時のプロベート及び税務手続きは、多くの場合、現地国の銀行、証券会社、弁護士等の専門家と英語あるいは現地語で対応する必要に迫られます。また、手続きを行う前に本人確認書類等の証明書も用意する必要があります。つまり、かなり高度な語学力とコミュニケーション能力が求められ、弁護士等からはそれなりの高い報酬も請求されることになります。下手をすると相続した財産を上回るコストがかかることもあるかもしれません。

 

これらのことから、海外での相続に絡むプロベートや税務手続き、さらには海外資産の処分及び換金をスムーズに行うためには、相続人が語学力に長け現地でのコミュニケーション能力が高く、かつ現地社会に入り込んでおり、知り合いの専門家がいることが必須となるでしょう。

海外に慣れてない相続人にとって海外財産はお荷物に

では、将来の相続人となる人が海外に行くことはめったになく、英語や現地語でのコミュニケーションをすることが苦手な場合はどうでしょうか。海外での相続に絡むプロベートや税務手続き、さらには処分及び換金にはかなりの困難が待ち受けています。現地の関係機関と直接コミュニケーションを行うことができないため、さらに間に専門家あるいはブローカーを入れなければならず、コストが格段に跳ね上がると同時にこちらの要望をきめ細かく伝えきれない可能性も高まります。

 

そして、日本の相続税の計算は、海外財産を含めて計算し納付しなければならないため、海外財産を早めに換金し日本の納税に充てる必要があるのに、現地国での名義変更の手続きが遅々として進まず、結局は塩漬け状態となることで相続税は納めたのに現金が入ってこないという最悪の結果になることも考えられます。あるいは、現地国での名義変更と換金に莫大なコストがかかり、日本の相続税を加味すると「結局は足が出てしまった」ということにならないとも限りません。

 

つまり、将来の相続人になる人が、頻繁に海外に赴き現地でお金を使うということがないのであれば、海外に財産を残すことは相続人にとってはかなりのお荷物となることから、相続発生前の早い機会に換金して日本に送金したほうが相続人のためにはいいでしょう。

本連載は、2014年9月18日刊行の書籍『海外資産の相続』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

海外資産の相続

海外資産の相続

永峰潤・三島浩光

幻冬舎メディアコンサルティング

金融商品や不動産など、海外資産の相続は、手続きが面倒なため、家族の誰も欲しがらないお荷物になってしまうことが多い。ただでさえ複雑な日本の相続税に、国や地域によって異なる税制が絡んでくるため、その処理にも煩わされ…

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