血糖コントロールが悪い糖尿病患者が予後も悪い
コロナで入院した患者7,337例を解析した海外における多施設研究では、糖尿病の「コントロール良好」群(ヘモグロビンA1c平均値は7.3%)と、「コントロール不良」群(ヘモグロビンA1c平均値は8.1%)とを比較したところ、1ヵ月後の病院内での死亡率は「良好」群と「不良」群で1.1% vs.11.0%と、10倍もの差が認められました。
このように、2型糖尿病はCOVID-19の予後の悪化に関連するリスク因子ではあるのですが、血糖コントロールが良好であれば、コロナに感染しても、予後がよいことが示されました(Cell Metabolism 31, 1068–1077 June 2, 2020)。
ご存知の通り、第4波、第5波においては、日本においても、基本的に緊急入院となった時に、病院すらも選べない状況が多発しました。
かかりつけ医ではない病院での入院ともなれば、既往歴や常用薬、持参薬のチェック等さえ不十分となってしまった事態も少なくありませんでした。
しかも、病院によってはそもそも糖尿病の専門医がいないこともあります。
また、医療従事者の感染予防の観点から、隔離病棟ではベッドサイドへの訪問や検査は最小限にならざるを得ないこともあります。このため、通常の入院中のような、きめ細かな血糖コントロールが行えないこともあり、さらにやむを得ずステロイド治療を行えば、さらに血糖値が上昇してしまうというジレンマもありました。
ましてや、自宅療養や宿泊施設療養となると、糖尿病の管理がさらに困難を極めることも考えられます。
糖尿病・生活習慣病患者のコロナ感染症における課題
第5波では、新型コロナウイルス感染症に感染した時点で、健診未受診などから、糖尿病と事前に診断されていない患者も多く、実際に数多くのコロナ対応をされていた先生に話を聞くと、「重症化していく人の傾向として『肥満』が大きな危険因子として注目されていた」とのことでした。
さらに、降圧薬やコレステロールを下げるスタチン薬を内服して、きちんと正常範囲内で血圧や脂質を管理されていた患者の方が、内服していなかった群よりも、コロナで重症化している人が少なかったといった医学的なデータも認められます。そういった意味では、このコロナ禍でも、きちんと定期的に通院し、必要であれば内服治療も継続しておくことも非常に大切です。
先程の日本における臨床データからも、「コロナ感染時に重症化しやすいのは、高齢者と基礎疾患がある人」であることが分かってきました。つまり、高齢者だけでなく、年齢が若くても、糖尿病や高血圧をはじめとする「生活習慣病」を持つ人は、いずれの疾患においても限りなく正常範囲に持っていくように、日頃から自己管理しておくことが極めて大切なのです。
代わり映えしない結論ではあるのですが、結局、このコロナ禍においても、減量・減塩・禁煙といったことに努めることが、自らの身を守っていくためには大変重要です。
佐藤文彦
Basical Health産業医事務所 代表